Skip to main content

The Merchant of Venice at Sam Wanamaker Playhouse

2022年3月12日、Sam Wanamaker PlayhouseにてThe Merchant of Veniceを観劇(2時間10分、休憩込み)。始まり方から終わり方まで、初めて見るような演出でした。
まずジェシカが登場し、Black Eyed Peasの"I Gotta Feeling"を静かに歌い、キリスト教徒たちの仮面舞踏会が始まり、ランスロットの逃亡、ジェシカが駆け落ちを決意する台詞が続きます。それから、原作の1幕1場が始まります。このように場面の順番を入れ替えることで、ユダヤ人を排除しようとするキリスト教徒たちの姿がより鮮明に見えました。
人肉裁判の場面は有名ですが、原作と異なっていたのは、ジェシカとロレンゾーも法廷に来ていたという点です。財産の没収と改宗を言い渡されたシャイロックに対して、ジェシカは父を想って(だと思いますが)涙を流します。キリスト教徒たちが札束をばら撒き騒ぐ中、ジェシカは悲しげな歌を歌いながら蝋燭の火を一つずつ消していき、暗転になり、劇が終わりました。ポーシャとバッサーニオ、ネリッサとグラシアーノの指輪の場面はありませんでした。
このように、始まり方も終わり方も他では見ないような演出でした。ジェシカが駆け落ちを夢見て"That tonight's gonna be a good night"と歌う冒頭から、泣きながら歌う終盤までの落差が激しく、胸に迫るものがありました。シャイロックいじめと、それを見つめるジェシカの眼差しに焦点を当てた演出だったと思います。前者はあるけれど、後者は初めて見ました。上演のポスターに写っているのはシャイロックとジェシカです。その意味が観劇後に分かった気がします。

(Caution: this post includes the content of a production. If you're going to see the production, you might not want to read this post before you see it.)
On 12 March 2022, I saw and heard The Merchant of Venice by William Shakespeare at Sam Wanamaker Playhouse.
At the beginning of the play, Jessica sang "I Gotta Feeling" by Black Eyed Peas, Christians had masques, Lancelot ran from Shylock, and Jessica decided to run and marry Lorenzo. Then the original Act 1 Scene 1 started. Such changes highlighted the Christians' aversion towards Jews in this production. 
In the trial scene, Jessica and Lorenzo were there unlike the Shakespeare's original. While Christians were merry about Antonio's win, Jessica cried for her father and sang sadly, and the play finished. There was no scene about the rings. 
Like this, it was unusual but interesting production from the beginning to the end. At first, Jessica sang "That tonight's gonna be a good night" with dreaming her new life with Lorenzo, but at the end, she cried sadly. Such a gap made the play Shylock's and Jessica's tragedy. Indeed, it focused Shylock and Jessica, as seen in the poster of the production.



Popular posts from this blog

ナツユメ@KAAT神奈川芸術劇場大スタジオ

2025年6月7日、KAAT神奈川芸術劇場大スタジオにて『ナツユメ』を観劇(1時間50分、休憩なし)。『夏の夜の夢』の翻案でした。 ロボットの少女ヘレナが、恋を知り、夢を見るというプロットで、ヘレナの夢という枠組みの中で物語が進みます。ヘレナは最初、私たちがイメージする典型的なロボットの動き方と話し方をしていて、役者の演技が上手だと思いました。ヘレナが恋を知った後も、基本的にはロボットなのですが、感情が高ぶった時には人間らしい動き方や話し方が見られて、その切り替わりの滑らかさが良いなと思いました。 ヘレナはロボットですが、ハーミアは人間です。そして二人は、シェイクスピアの原作通り、幼馴染みでした。ロボットのヘレナと人間のハーミアがどのようにして仲良くなったのか、物語が始まる以前のことを想像したくなりました。人間とロボットが一緒に暮らす未来が近いからかも、と思ってわくわくしました。 職人たちもロボットという設定でした。ロボットの劇団による演劇があったら面白そうだと思うので、こちらも近い未来を想像して楽しくなりました。シェイクスピアの原作でも「職人たちが公爵の御前で演劇!?」というところが面白いと思うので、意外性を持った劇団という意味では今回の上演における彼らも同じかもしれない、と思いました。 今回の上演で最も印象的だったのは、AIアバターがティターニアを演じていたことでした。「演じていた」と言っていいのか、「インプットされた状態で舞台上に存在していた」と言った方が良いのか、表現は難しいところですが、それだけ新しい試みだということです。人間が演じるロボットのヘレナと、そもそもAIアバターであるティターニアの、理由や効果の違いは何だろう?と考えるきっかけをくれる上演でした。ティターニアは、AIの有無にかかわらず、妖精の女王というだけで人間離れした存在です。そのことを表現するのに効果的な演出だったと私は思いましたが、答えは一つではないとも思いました。好きなように感じ取って良い、という上演だったと思うので、とても興味深かったです。 On 7 June 2025, I saw and heard Natsuyume at Kanagawa Arts Theatre in Yokohama. It was an adaptation of William Shakespeare...

イエローヘルメッツ公演のお知らせ&講演のお知らせ

シェイクスピア作品上演企画「イエローヘルメッツ」が、今年の夏も公演を行います。今年の作品は『マクベス』です。上演される機会の多い作品ですので、他の劇団や劇場で観て作品が気になったという方も、観たことがないからこそ気になるという方も、ぜひお越しください。 公演概要 イエローヘルメッツ vol. 4『マクベス』 2025年8月7日(木)~11日(月祝)@すみだパークシアター倉 詳細、チケットご購入は こちらから そして、8月7日(木)の公演終了後に行うイエローヘルメッツ解剖講座にて、今年も講師を務めます。シェイクスピアの『マクベス』の小田島雄志訳と、山崎清介さんによる『マクベス』の脚本を比較し、イエローヘルメッツがつくる「難しすぎず簡単すぎないシェイクスピア」を解説していきます。3回目(オンライン開催の回を含めれば5回目)となる講座、私も楽しみにしていますので、ご参加いただけると嬉しいです。 他にも、舞台上で素潜りシェイクスピア(ワークショップ)や、アフタートークが開催される回もあります。詳細はチラシ画像をご覧ください。 どうぞよろしくお願いいたします。

ヘンリー四世 第1部@ROCK JOINT GB

2025年5月31日、ROCK JOINT GBにて『ヘンリー四世 第1部』を観劇(85分、休憩なし)。イエローヘルメッツ番外公演として、ライブハウスで、5人の女優が、最小限の衣装と小道具で行うスタイルの上演でした。 イエローヘルメッツは昨年『リチャード二世』を上演していました。その時にボリングブルックを演じていた役者が、今回ヘンリー四世を演じていました。本で読んだ時、両作品におけるボリングブルック=ヘンリー四世は、同じ人物でありながら描写が異なるように思っていました。王としての苦労を経てきたからでしょうか。『リチャード二世』を観劇した時のボリングブルックの印象(立ち向かう側としての強さなど)と、今回のヘンリー四世の印象(王としての孤独や、やり場のなさなど)の違いが、舞台上で鮮やかに見えたので、役者の技量に感動しました。 5人で演じる歴史劇ということで、一人の役者が複数の役を担当していました。どの役者も、別の役を演じる時、表情や立ち方の変化が分かりやすかったので、衣装が変わらなくても混乱することなく楽しめました。 今回の『ヘンリー四世 第1部』だけでも良い上演だったと思いますが、『リチャード二世』も観ていた私はその時との繋がりを考えることでさらに興味深い観劇体験ができました。そうなると、『ヘンリー四世 第2部』も上演してくれたら嬉しいな、と期待してしまいます! On 31 May 2025, I saw and heard Henry IV, Part 1  by William Shakespeare at Rock Joint GB in Tokyo. It was played at a small venue, by five female actors, with simple black clothes (without changing costumes). They performed Richard II last year. The actor who played Henry Bolingbroke at that time played Henry IV this time. When I read both plays, I thought Bolingbroke and Henry IV were described diffe...