Skip to main content

Much Ado About Nothing at Shakespeare's Globe

2022年4月30日、Shakespeare's GlobeにてMuch Ado About Nothingを観劇(2時間55分、休憩込み)。最近、観劇する機会の多い作品です。(以下、ネタバレ注意です。)

感想~なるべく客観的に~
今回の上演では、レオナートとアントーニオが女性化されていて、それぞれレオナータ、アントーニアと呼ばれていました。これまで、ドン・ペドロやドン・ジョンが女性化される上演は見たことがありましたが、レオナートを女性化する例は見たことがありませんでした。「こちらがあなたのお嬢さんですね?」と尋ねたドン・ペドロに対し、レオナータが「この子の父親(原作では「母親」)が何度もそう申しておりました」と答える台詞は矛盾するかなと思いましたが、芝居が進むにつれて、レオナートやアントーニオを女性化する意味が見えてきました。ヴェネト(原作ではメッシーナ)は女性社会、ドン・ペドロとその仲間たちは男性社会という構図が見えたからです。

感想~主観的に~
5年前にもグローブ座でMuch Ado About Nothingを観劇していました。せっかくなので、前回と同じエリアの座席を購入してみました。同じ角度から同じ作品を観劇して、懐かしい気持ちになりました。
今回、上記以外の点で気になったのは、侍女の一人・アーシュラの役がカットされていたことです。一度演じたことがある、思い入れのある役だったので、少し寂しかったです。ただ、役がカットされたと言っても、アーシュラの台詞は残されていて、アントーニアやレオナータに割り振られていたので、役だけをカットする意味とは?と思ってしまいました。

客席について
今回購入した座席は、Middle Gallery(2階席)のステージに最も近いエリアです。グローブ座のような円形劇場だと、舞台に近い席からは舞台が見えにくくなります。それにもかかわらず、シェイクスピアが活躍していた当時、そのエリアは"Gentleman's Box"と呼ばれていて、身分の高い観客のための良い席とされていました。その理由は、他の観客の視界に入るエリアということで、高級な衣服を身にまとった貴族が自分の姿を他の観客に見てもらえるためだと言われています。現在のグローブ座でも"Gentleman's Box"という呼び方は変わらず、壁の装飾は他のエリアと異なり豪華な模様となっています。見えにくい座席ということで、値段は貴族らしくなくお手頃価格で、私のような学生には嬉しい座席です。5年前にチケットを購入した時には、そんなことは考えてもいませんでした。知識が増えてから再び劇場を訪れると、新たな発見があり面白いです。

(Caution: this post includes the content of a production. If you're going to see the production, you might not want to read this post before you see it.) 
On 30 April 2022, I saw and heard Much Ado About Nothing by William Shakespeare at Shakespeare's Globe.
In this production, Leonato and Antonio were feminized and they were called Leonata and Antonia. I had seen productions in which Don Pedro and Don John were feminized, but it was my first time to see feminized Leonato. When Don Pedro said "I think this is your daughter", Leonata answered "Her father [originally "mother"] hath many times told me so". At first, I thought these lines became contradictory due to the change, but after that, I noticed that the change was meaningful. That was because I could see a clear dichotomy that Veneto (originally Messina) was a feminine world and Don Pedro's company was a masculine world. 
Other than that, I noticed that Ursula, one of Hero's gentlewomen, did not appear in this production. I had played the role before, so I felt sad about her absence. However, her lines were not deleted. Most of her lines were spoken by Antonia and Leonata. When her lines remained, why didn't she appear?
This time, I bought a ticket for a seat in the Middle Gallery which is near to the stage. In an amphitheatre like the Globe, such a seat has a restricted view. Nevertheless, the area was called "Gentleman's Box" in Shakespeare's time. That was because the aristocratic audiences in the area could be seen by other audiences. It was like celebrities' seats. In today's Globe, it is still called "Gentleman's Box". However, unlike Shakespeare's time, the seats are not that expensive because of a restricted view. Then, I could experience pseudo-aristocratic theatre-going at a reasonable price!

隣の席の観客が写真を撮ってくれました。



Popular posts from this blog

イエローヘルメッツ公演のお知らせ&講演のお知らせ

シェイクスピア作品上演企画「イエローヘルメッツ」が、今年の夏も公演を行います。今年の作品は『マクベス』です。上演される機会の多い作品ですので、他の劇団や劇場で観て作品が気になったという方も、観たことがないからこそ気になるという方も、ぜひお越しください。 公演概要 イエローヘルメッツ vol. 4『マクベス』 2025年8月7日(木)~11日(月祝)@すみだパークシアター倉 詳細、チケットご購入は こちらから そして、8月7日(木)の公演終了後に行うイエローヘルメッツ解剖講座にて、今年も講師を務めます。シェイクスピアの『マクベス』の小田島雄志訳と、山崎清介さんによる『マクベス』の脚本を比較し、イエローヘルメッツがつくる「難しすぎず簡単すぎないシェイクスピア」を解説していきます。3回目(オンライン開催の回を含めれば5回目)となる講座、私も楽しみにしていますので、ご参加いただけると嬉しいです。 他にも、舞台上で素潜りシェイクスピア(ワークショップ)や、アフタートークが開催される回もあります。詳細はチラシ画像をご覧ください。 どうぞよろしくお願いいたします。

ヘンリー四世 第1部@ROCK JOINT GB

2025年5月31日、ROCK JOINT GBにて『ヘンリー四世 第1部』を観劇(85分、休憩なし)。イエローヘルメッツ番外公演として、ライブハウスで、5人の女優が、最小限の衣装と小道具で行うスタイルの上演でした。 イエローヘルメッツは昨年『リチャード二世』を上演していました。その時にボリングブルックを演じていた役者が、今回ヘンリー四世を演じていました。本で読んだ時、両作品におけるボリングブルック=ヘンリー四世は、同じ人物でありながら描写が異なるように思っていました。王としての苦労を経てきたからでしょうか。『リチャード二世』を観劇した時のボリングブルックの印象(立ち向かう側としての強さなど)と、今回のヘンリー四世の印象(王としての孤独や、やり場のなさなど)の違いが、舞台上で鮮やかに見えたので、役者の技量に感動しました。 5人で演じる歴史劇ということで、一人の役者が複数の役を担当していました。どの役者も、別の役を演じる時、表情や立ち方の変化が分かりやすかったので、衣装が変わらなくても混乱することなく楽しめました。 今回の『ヘンリー四世 第1部』だけでも良い上演だったと思いますが、『リチャード二世』も観ていた私はその時との繋がりを考えることでさらに興味深い観劇体験ができました。そうなると、『ヘンリー四世 第2部』も上演してくれたら嬉しいな、と期待してしまいます! On 31 May 2025, I saw and heard Henry IV, Part 1  by William Shakespeare at Rock Joint GB in Tokyo. It was played at a small venue, by five female actors, with simple black clothes (without changing costumes). They performed Richard II last year. The actor who played Henry Bolingbroke at that time played Henry IV this time. When I read both plays, I thought Bolingbroke and Henry IV were described diffe...

陽気な幽霊@シアタークリエ

2025年5月10日、シアタークリエにて『陽気な幽霊』を観劇(3時間、休憩込み)。 嚙み合わない会話や嫉妬によって笑える喜劇でしたが、終わり方はしっとりとしたものでした。二人の妻の霊を見送ったチャールズが、寂しそうで、でも解放されたようにも見え、印象的でした。この場面が特に心に残ったのは何故か思い返してみると、2021年にロンドンの Harold Pinter Theatreで観た上演 では、この場面がカットされていたからだと思います。その上演では、エルヴィラの霊をあの世に戻すことができず、ルースの霊まで呼び出してしまった、というところで終わっていたと思います。記憶が曖昧な部分もありますが、当時の観劇ノートを見返すと、マダム・アーカティの失敗が観客の笑いを誘って幕、と書いてあり、上演時間も40分ほど差があるので、そうだったはずです。『陽気な幽霊』を観るのはその時が初めてだったので、そのような終わり方をするものだと思い込んでいました。それなので、今回初めて観た最後の場面が、特に印象に残ったのだと思います。 笑いと感動の両方を楽しめた舞台、観ることができて良かったです。 On 10 May 2025, I saw and heard Blithe Spirit by Noël Coward at Theatre Creation in Tokyo.  The play, full of misunderstandings and jealous, was a hilarious comedy. However, the very last scene was a touching one. When the wives' spirits had gone, Charles looked sad but a little relieved. I wondered why this scene was especially touching for me, and I realised the past production that I saw at Harold Pinter Theatre in London (2021) didn't include this scene so it was fresh for me this time. In ...