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Twelfth Night at The Minack Theatre

2022年5月26日、The Minack TheatreにてTwelfth Nightを観劇(2時間45分、休憩込み)。劇場と作品がマッチした上演だったので、劇場について、作品について、演出について、と分けて書いてみたいと思います。

劇場について
The Minack Theatreは、コーンウォールの南西にある半円形の屋外劇場です。海辺の崖につくられた劇場で、Rowena Cadeという女性が一人で建てたというので驚きです。1932年8月のThe Tempestが最初の上演だというので、90年もの歴史があり、シェイクスピア作品の上演も多い劇場です。

作品について
Twelfth Nightは海で生き別れた双子についての作品です。他にも魅力的なサブプロットがありますが、海がテーマの一つであることは確かです。海辺の劇場ということで、海をテーマにした作品が似合うと思いました。第1幕第2場ではヴァイオラと船長が崖になっている海の方から登場し、まさに難破船から生き延びた二人であるように見えました。

演出について
今回の演出は、セバスチャン、アントーニオ、サー・アンドルー、フェイビアンの性別が女性に変更されていました。それぞれセバスティエンヌ、アントーニア、レディー・アンドレアと名前も変えられていました(フェイビアンはフェイビアンのままでした)。『十二夜』は何度も観劇していますが、これらの役、特に双子の片方であるセバスチャンを女性にする演出は初めて見ました。そのような性別の変更によって、台詞が矛盾するように思える箇所がいくつかありました(ヴァイオラの"I am all the daughters of my father's house"や、アントーニアが男装したヴァイオラを女性であるセバスティエンヌと間違える場面など)。しかし、同性のカップル(オリヴィアとセバスティエンヌ)や同性への口説き(アンドレアからオリヴィア)が含まれた今回の演出は、多様性が問われる時代に合ったものだと思いました。
また、セバスチャンとアントーニオが女性に変更されたことで、アントーニオ(アントーニア)のやるせなさがより鮮明になりました。原作では、アントーニオ(男性)はセバスチャン(男性)に思いを寄せています。これを恋とするか崇拝の対象とするかは演出によりますが、少なくとも思いを寄せていることは確かです。しかし、セバスチャンはオリヴィア(女性)と結婚します。アントーニオの失恋は、原作では、セバスチャンの性的指向によるものとして諦めざるを得ないものですが、今回の上演では、この三角関係の全員が女性となっているので、アントーニアの失恋はやるせないものとなっています。最後の場面では、彼女の切ない表情が印象的でした。

劇場、作品、演出すべてが興味深いと思った一日でした!

On 26 May 2022, I saw and heard Twelfth Night by William Shakespeare at The Minack Theatre.
(1) About The Minack Theatre: it is an outdoor amphitheatre in southwest Cornwall, built on a rocky clifftop by a woman named Rowena Cade. The theatre saw its first performance in August 1932, which was The Tempest, so it has nearly 90-year-old history. It has performed Shakespeare's plays frequently.
(2) About Twelfth Night: one of the themes of the play is about twins who separated by shipwreck. Since the theatre was located in the seaside, I thought the theme of the play matched the venue. In act 1 scene 2, Viola and the sea captain appeared from the seashore towards the stage, which made me think that they were the very characters who survived from the shipwreck.
(3) About the production: in this production, Sebastian, Antonio, Sir Andrew and Fabian were changed their gender: they were called Sebastienne, Antonia, and Lady Andrea (Fabian remained Fabian). It was my first time to see feminized Sebastian. Such a change regarding gender made some contradictory lines, such as Viola's "I am all the daughters of my father's house" and the scene when Antonia mistook disguised Viola for female Sebastienne. That being said, I thought such an attempt was good in the context of today's world which seeks diversity.
Also, such a change made Antonia more heartbroken. In Shakespeare's original, Antonio loves or at least adores Sebastian, but Sebastian marries Olivia. Antonio has his heart broken, but he might be able to console himself by thinking the marriage is due to Sebastian's sexual orientation. On the other hand, in this production, female Antonia can't do so because she was taken female Sebastienne by female Olivia. In the last scene, her facial expression of sadness was impressive.





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このブログを見てくれてありがとうございます。Rena Endoです。日本に住みながら、イギリスの大学院の博士課程(ディスタンスラーニングコース)に所属しています。 It's Rena Endo, living in Japan but attending a British university by distance learning. Research / Activity イギリス演劇を研究する大学院生・大学講師として、劇場と教室を繋ぐ存在になりたいです。その目標のための、学会発表や論文投稿、劇場でのレクチャーについて、お知らせや報告をしていきます。 I'm a PhD student studying the English drama and a Japanese theatre industry, and my ambition is to be active at a classroom and at a theatre; I encourage students to enjoy stage productions (in addition to studying by turning a page), and I give academic (but not-too-formal) lectures to theatre enthusiasts at a theatre. I write about such activities in this blog. Theatre イギリス演劇以外にも、色々なジャンルの舞台芸術を鑑賞することが好きです。観劇の感想を投稿していきます。日本語と英語の両方で書いていくので、英語圏の友人にも読んでもらえたら嬉しいです。日本にはこんな舞台作品があるんだよ!と伝えたいです。 I enjoy seeing various kinds of theatre productions. When I see a performance, I write about what I see and how I think about it. The posts are written both in Japanese and in English, so I'll be happy if English-...