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夏の夜の夢&間違いの喜劇@座・高円寺2

2023年5月12日、座・高円寺2にて『夏の夜の夢』と『間違いの喜劇』を観劇。シェイクスピアシアターの3年ぶりの主催公演でした。

夏の夜の夢
『夏の夜の夢』は劇中劇があったり、妖精が人間の様子を鑑賞するように見たりして、メタシアターのようなところがあります。幕切れでのパックの口上は、役者から観客へのメッセージとして聞こえます。今回の上演では、シェイクスピアシアターの代表・演出がパックを演じていて、「われら役者は影法師」からの一節は特に、3年ぶりに主催公演を行う劇団の新たな決意が見られるような口上でした。

間違いの喜劇
『間違いの喜劇』は双子の取り違えによる誤解が面白い喜劇です。それと同時に、取り違えられることによって「自分は何者なのか?」とアイデンティティーが脅かされるという、シリアスな面も見られます。今回の上演では、役者は全員仮面を着けていました。最初は、双子を演じる役者の顔の違いを隠すためかと思っていましたが、双子とその家族が再会する場面で全員が仮面を外したので、顔を隠すためではないと思い直しました。これは私の推測ですが、家族が再会し、その日の誤解が解けた時、登場人物は自分が何者か分かり、そのことが「仮面を外す」という行為によって表現されていたのかなと思いました。

シェイクスピアシアターの十八番(だと思う)作品をセットで観られて良かったです!

On 12 May 2023, I saw and heard A Midsummer Night's Dream and The Comedy of Errors by Shakespeare Theatre, a Japanese theatre company, at ZA-KOENJI Public Theatre in Tokyo.
(1) A Midsummer Night's Dream: I think this comedy is a metatheatrical play, because it includes a play-within-a-play and fairies look at humans as if they were watching a play. Then, Puck's speech at the end of the play sounds like a message from actors to audiences. In this production, Puck was performed by the director of the company. When he started saying "If we shadows have offended..." in particular, I found the message by him (Puck/director) convincing. 
(2) The Comedy of Errors: The play has farcical scenes caused by a confusion with two sets of twins. At the same time, the play also seems serious, because characters are about to lose their identity due to the confusion. In this production, all actors had masks. At first, I guessed that they had masks not to show different faces among four actors who played two sets of twins, but I realised that I might be wrong when all the actors put off their masks in the scene of the family's reunion. I suppose the action of putting off the masks expresses that the characters finally find who they are, when the confusion is solved after the reunion.



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ナツユメ@KAAT神奈川芸術劇場大スタジオ

2025年6月7日、KAAT神奈川芸術劇場大スタジオにて『ナツユメ』を観劇(1時間50分、休憩なし)。『夏の夜の夢』の翻案でした。 ロボットの少女ヘレナが、恋を知り、夢を見るというプロットで、ヘレナの夢という枠組みの中で物語が進みます。ヘレナは最初、私たちがイメージする典型的なロボットの動き方と話し方をしていて、役者の演技が上手だと思いました。ヘレナが恋を知った後も、基本的にはロボットなのですが、感情が高ぶった時には人間らしい動き方や話し方が見られて、その切り替わりの滑らかさが良いなと思いました。 ヘレナはロボットですが、ハーミアは人間です。そして二人は、シェイクスピアの原作通り、幼馴染みでした。ロボットのヘレナと人間のハーミアがどのようにして仲良くなったのか、物語が始まる以前のことを想像したくなりました。人間とロボットが一緒に暮らす未来が近いからかも、と思ってわくわくしました。 職人たちもロボットという設定でした。ロボットの劇団による演劇があったら面白そうだと思うので、こちらも近い未来を想像して楽しくなりました。シェイクスピアの原作でも「職人たちが公爵の御前で演劇!?」というところが面白いと思うので、意外性を持った劇団という意味では今回の上演における彼らも同じかもしれない、と思いました。 今回の上演で最も印象的だったのは、AIアバターがティターニアを演じていたことでした。「演じていた」と言っていいのか、「インプットされた状態で舞台上に存在していた」と言った方が良いのか、表現は難しいところですが、それだけ新しい試みだということです。人間が演じるロボットのヘレナと、そもそもAIアバターであるティターニアの、理由や効果の違いは何だろう?と考えるきっかけをくれる上演でした。ティターニアは、AIの有無にかかわらず、妖精の女王というだけで人間離れした存在です。そのことを表現するのに効果的な演出だったと私は思いましたが、答えは一つではないとも思いました。好きなように感じ取って良い、という上演だったと思うので、とても興味深かったです。 On 7 June 2025, I saw and heard Natsuyume at Kanagawa Arts Theatre in Yokohama. It was an adaptation of William Shakespeare...

イエローヘルメッツ公演のお知らせ&講演のお知らせ

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ヘンリー四世 第1部@ROCK JOINT GB

2025年5月31日、ROCK JOINT GBにて『ヘンリー四世 第1部』を観劇(85分、休憩なし)。イエローヘルメッツ番外公演として、ライブハウスで、5人の女優が、最小限の衣装と小道具で行うスタイルの上演でした。 イエローヘルメッツは昨年『リチャード二世』を上演していました。その時にボリングブルックを演じていた役者が、今回ヘンリー四世を演じていました。本で読んだ時、両作品におけるボリングブルック=ヘンリー四世は、同じ人物でありながら描写が異なるように思っていました。王としての苦労を経てきたからでしょうか。『リチャード二世』を観劇した時のボリングブルックの印象(立ち向かう側としての強さなど)と、今回のヘンリー四世の印象(王としての孤独や、やり場のなさなど)の違いが、舞台上で鮮やかに見えたので、役者の技量に感動しました。 5人で演じる歴史劇ということで、一人の役者が複数の役を担当していました。どの役者も、別の役を演じる時、表情や立ち方の変化が分かりやすかったので、衣装が変わらなくても混乱することなく楽しめました。 今回の『ヘンリー四世 第1部』だけでも良い上演だったと思いますが、『リチャード二世』も観ていた私はその時との繋がりを考えることでさらに興味深い観劇体験ができました。そうなると、『ヘンリー四世 第2部』も上演してくれたら嬉しいな、と期待してしまいます! On 31 May 2025, I saw and heard Henry IV, Part 1  by William Shakespeare at Rock Joint GB in Tokyo. It was played at a small venue, by five female actors, with simple black clothes (without changing costumes). They performed Richard II last year. The actor who played Henry Bolingbroke at that time played Henry IV this time. When I read both plays, I thought Bolingbroke and Henry IV were described diffe...