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ハムレット@明治大学アカデミーホール

2023年11月4日、明治大学アカデミーホールにて『ハムレット』を観劇(2時間35分、休憩なし)。明治大学の学生による「明治大学シェイクスピアプロジェクト」の第20回公演でした。以下、ネタバレ注意です。
始まり方が印象的な上演でした。最初に数名が楽器を演奏しながら舞台上に登場し、楽器隊のメンバーかなと思っていたら(キャストの他に楽器隊がいて生演奏を行うからです)、後の本編で旅役者を演じる学生たちでした。彼らはローゼンクランツとギルデンスターンと出会い、それぞれがこれからエルシノア城へ向かうことを観客は知ります。分かりやすさがいいなと思いました。
それからキャストたちが登場し、ハムレットは第四独白を言います。先ほどの分かりやすさに続き、作品のテーマを提示する演出だったと思います。
そして第1幕第1場が始まります。ここでは、一番最初の"Who's there?"にあたる台詞がカットされていたことに驚きました。この台詞は、グローブ座のように賑やかな劇場で、開演前に談笑したり飲食をしたりしている観客たちの注意を引き付けるのに効果的だと思います。しかし今回の上演会場はプロセニアム形式のホールで、観客は静かでしたし、上記の通り観客の注意を引くやりとりも既にあったので、緊張感の漂う"Who's there?"がなくてもスムーズに劇を始めることができたのかなと思います。
明治大学シェイクスピアプロジェクトは日本語上演ですが、学生自身が翻訳を行い、上演台本をつくっています。約2時間半というコンパクトな上演で、第1幕第1場の他にも台詞のカットがありました。カット箇所の決定は演出家(こちらも学生です)が行うのか、翻訳を行う時点である程度決まってくるのか、気になりました。

(Caution: contains a spoiler.)
On 4 November 2023, I saw and heard Hamlet by William Shakespeare at Meiji University in Tokyo. It was the 20th production of a project called "Meiji Shakespeare Project," for which students at Meiji University perform a play by Shakespeare in Japanese once a year.
The opening was interesting for me. First, some students appeared on stage with musical instruments. I thought they were musicians but actually they were actors who would play roles of travelling players in Act 2 and Act 3. They met Rosencrantz and Guildenstern, and their conversation told audiences that they were heading to Elsinore. It was an understandable scene.
Then all actors appeared on stage, and Hamlet spoke "To be, or not to be" soliloquy. I thought this showed one of the themes of the play.
After that, Shakespeare's Act 1 Scene 1 began. I was surprised that they cut the first line, Bernardo's "Who's there?" This line is effective to attract audiences' attention, who tend to chat, eat, and drink before a play begins, particularly in a lively theatre like The Globe. However, there was no need to attract audiences' attention by the line in this production, because it was performed at a quiet proscenium hall and the audiences already focused after the scene as above. 
When performing Shakespeare in Japanese, the project uses students' own translation. Then, I wonder if who decides which line to delete: a director or translators.



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自己紹介 / Introducing myself

このブログを見てくれてありがとうございます。Rena Endoです。日本に住みながら、イギリスの大学院の博士課程(ディスタンスラーニングコース)に所属しています。 It's Rena Endo, living in Japan but attending a British university by distance learning. Research / Activity イギリス演劇を研究する大学院生・大学講師として、劇場と教室を繋ぐ存在になりたいです。その目標のための、学会発表や論文投稿、劇場でのレクチャーについて、お知らせや報告をしていきます。 I'm a PhD student studying the English drama and a Japanese theatre industry, and my ambition is to be active at a classroom and at a theatre; I encourage students to enjoy stage productions (in addition to studying by turning a page), and I give academic (but not-too-formal) lectures to theatre enthusiasts at a theatre. I write about such activities in this blog. Theatre イギリス演劇以外にも、色々なジャンルの舞台芸術を鑑賞することが好きです。観劇の感想を投稿していきます。日本語と英語の両方で書いていくので、英語圏の友人にも読んでもらえたら嬉しいです。日本にはこんな舞台作品があるんだよ!と伝えたいです。 I enjoy seeing various kinds of theatre productions. When I see a performance, I write about what I see and how I think about it. The posts are written both in Japanese and in English, so I'll be happy if English-...