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デカローグ@新国立劇場小劇場

2024年4月13日、新国立劇場小劇場にて『デカローグ』を観劇(2時間、休憩込み)。以下、ネタバレ注意です。
ポーランドのクシシュトフ・キェシロフスキによる、十篇の物語から成る作品で、私が観劇したプログラムAは第1話と第3話の上演でした。
第1話は「ある運命に関する物語」と副題がついていて、教授である父と、彼からコンピューターの使い方を教わる息子の話でした。1980年代が舞台なので、コンピューターの黎明期というところだと思いますが、21世紀のAI時代を予感させる台詞もあり、興味深かったです。そんな中、人の気持ちや、もっと大きく言えば生死といった運命について、計算では答えが出ないということを教えてくれる上演でした。
第3話は「あるクリスマス・イヴに関する物語」と副題がついていましたが、テーマとしては寂しさや噓が挙げられるように思いました。第3話は、ある家族の賑やかなクリスマス・イヴの場面で始まるのですが、第1話で息子を失った父が一人でその家の前を通り過ぎるという演出がされていて、賑やかさとの対比により、寂しさというテーマがここでも提示されているように見えました。
プログラムAは第1話と第3話のセットで、1、2、3、4の順になっていないのは何故だろうかと観劇前には思っていたのですが、このような繋がりが見えたので納得しました。

(Caution: contains a spoiler.)
On 13 April 2024, I saw and heard programme A of Dekalog at New National Theatre Tokyo. Dekalog is a stage adaptation of ten short films by Krzysztof Kieslowski, a Polish film director and screenwriter. Programme A includes episode 1 and episode 3.
Episode 1 is about a father, who is a professor, and his son, who is good at using a computer because of the father. The setting of the story is 1980s, but some lines predict the era of AI, so I found them interesting. The story told us that human's feelings and destiny are sometimes incalculable and unpredictable.
As for episode 3, I thought the themes were loneliness and lies. The episode begins with a family's Christmas Eve. A man who lost his son in episode 1, passes in front of the house. The contrast between the cheerful family and the depressed man highlights the theme of loneliness. 
Episode 3 follows episode 1 in programme A (and episode 4 follows episode 2 in programme B, which I didn't see this time). I didn't know why at first, but now I can see the connection between episode 1 and episode 3.



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夏の夜の夢@彩の国さいたま芸術劇場大ホール

2024年12月14日、彩の国さいたま芸術劇場大ホールにて『夏の夜の夢』を観劇(2時間20分、休憩込み)。 惚れ薬の魔力を解く場面が印象的でした。ライサンダーの心をヘレナからハーミアに戻すために、魔力を解く草の汁がライサンダーの目に絞られますが、今回の上演では、ディミートリアスの目にも絞られていたので驚きました。それでは二人がハーミアを取り合う状態に戻るのではないかと思いましたが、魔力が解かれた後も、ディミートリアスはヘレナを慕っていました。シェイクスピアの原文は、ディミートリアスとヘレナが結ばれるのは真実の愛ではなく惚れ薬のためではないかという疑問が残る終わり方ですが、その疑問に対する演出だったのではないかと思います。『夏の夜の夢』が始まる前の話として、ディミートリアスとヘレナは恋仲にあったので、その時点まで戻るという意味で、魔力が解かれたのではないかと想像します。 On 14 December 2024, I saw and heard A Midsummer Night's Dream by William Shakespeare at Saitama Arts Theater in Saitama. The most interesting scene was when Puck used the herb to amend the confusion among Athenian lovers. In Shakespeare's text, Puck crushes it into Lysander's eyes to make him unspelled. However, in this production, Puck used the herb for both Lysander and Demetrius. I thought that might lead them to love Hermia if both of them were unspelled, but Demetrius still loved Helena even after Puck's use of the herb. I didn't know why, but I assumed that Demetrius went bac...

ロミオとジュリエット@新国立劇場小劇場

2024年12月7日、新国立劇場小劇場にて『ロミオとジュリエット』を観劇(1時間50分、休憩なし)。新国立劇場演劇研修所第18期生の公演でした(修了者も2名出演していました)。以下、ネタバレ注意です。 現代社会の暗い側面を映したような演出でした。一番驚いたのは、ロザラインの名前が出てこなかったところです。それにより、冒頭のロミオの憂鬱が、恋によるものではなく、現代の若者の閉塞感のように見えました。 他の登場人物にも、やり場のない思いが表れていたと思います。例えば、暴力を止める大公自身が暴力を振るうので、どうしようもない社会という感じがしました。 このような演出は、2021年にロンドンのグローブ座で観た Romeo and Juliet と似ていると思いました。どちらの上演も、人間の愚かさや現代社会の問題を突き付けてくるようなものだったので、見ていて悲しくなりましたが、それは嫌な上演という意味ではなく、観客が考えたり行動したりするきっかけになる可能性があるという点で、良い上演だったと思います。 (Caution: contains a spoiler.) On 7 December 2024, I saw and heard Romeo and Juliet by William Shakespeare at New National Theatre Tokyo.  It seemed to me that this production reflected current social issues. To my surprise, there was no mention to Rosaline. Then, Romeo's melancholy in the beginning of the play looked like frustrations that today's young adults may have, rather than the melancholy because of love. Other characters also had frustrations, which was not surprising in this production with full of violence. Prince Escalu...

天保十二年のシェイクスピア@日生劇場

2024年12月21日、日生劇場にて『天保十二年のシェイクスピア』を観劇(3時間35分、休憩込み)。 シェイクスピアの全作品が散りばめられた作品なので、各場面にクライマックスがあるように思いました。そのような中で、作品全体のクライマックスで鏡が出てきたことには、象徴的な意味があったと思います。『天保十二年のシェイクスピア』の終盤では、悪役への復讐として、その醜さを直視させるために鏡が使われていました。シェイクスピアの戯曲には、対立、反逆、狂気、取り違え、嫉妬など様々な要素がありますが、作者・井上ひさしにとってのシェイクスピアは、とりわけ"reflection"がキーワードなのかと思いました。日本語の適訳が思い浮かばないのですが、芝居が世相を映す、観客が登場人物を見て自分を見つめ直す機会を得る、という意味での「映す/映る」ということです。そのことに気付けたので、今回の観劇は興味深いものでした。 2020年に観劇 してから4年以上経ち、シェイクスピア作品への直接的・間接的言及が分かる箇所は増えました。それでも、37作品全てに気付くには至りませんでした。まだまだ修行が必要だと思いました(笑) On 21 December 2024, I saw and heard Tempo 12-nen no Shakespeare by Hisashi Inoue at Nissay Theatre in Tokyo.  As the plot of the play was woven from all of the Shakespeare's plays, each scene had a climax, such as love, reunion, death, and so on. In the very last climax at the end of the play, a character brought a mirror (or a glass) for revenge, which was iconic. She brought it in front of the Richard-like villain, who had killed her twin sister and her husband, so that the vi...