Skip to main content

二人の主人を一度に持つと@本多劇場

2024年5月11日、本多劇場にて『二人の主人を一度に持つと』を観劇(2時間25分、休憩込み)。ゴルドーニの喜劇です。
登場人物間の勘違いあり、男装ありで、個人的に好みのプロットでした。というのは、シェイクスピアの『間違いの喜劇』や『十二夜』が好きで、それらと似た点が見られたからです。
二人の主人に仕える召使い・トゥルッファルディーノは、どちらの主人の命令かをよく取り違え、混乱します。主人たちは、彼がもう一人にも仕えていることを知らないので、相手側にもう一人召使いがいると思っていて、勘違いが起こります。観客は事情を知っているので、情報量において優位に立つことができ、面白かったです。このような、召使いのドタバタが引き起こす面白さは、『間違いの喜劇』と似ていると思いました。
ヒロインの一人であるベアトリーチェは、恋人の後を追うため、男装してヴェネツィアへやって来ます。ベアトリーチェを見ていると、『ヴェローナの二紳士』のジュリアや、『ヴェニスの商人』のジェシカ(こちらは駆け落ちですが)を思い出しました。また、恋人が命を落としたと勘違いをし、我を忘れて嘆き悲しむ姿は、『シンベリン』のイモージェンや『お気に召すまま』のロザリンドのようでした。さらに、決闘になりかけるも実は女性なので戦えないという場面は、『十二夜』のヴァイオラを想起させるものでした。
ここまでプロットについて書きましたが、それではどの劇団やプロダクションが上演しても同じ感想しか持たないのかと自分で突っ込みたくなるので、この上演ならではのポイントも書きます。古典的な衣装やヘアメイクや音楽が印象的だったのですが、その中でも衣装の色が良いと思いました。白を基調とした衣装の中で、家族同士には同じ色の装飾が使われていました。登場人物の関係が分かりやすく、並んだ時にきれいに見えるのも良かったです。また、トゥルッファルディーノの衣装には、他の登場人物の装飾の色である赤、青、黄、緑のカラフルな模様がありました。コンメディア・デッラルテのアルレッキーノらしく、登場人物間を行き来する身軽さが視覚的に表現されていたと思います。
台本の段階でも、演出の段階でも、好きだと思う上演でした。

(Caution: contains a spoiler.)
On 11 May 2024, I saw and heard Il servitore di due padroni by Carlo Goldoni at Honda Theater in Tokyo. 
It included misunderstandings among characters and disguise, so I liked the plot, for I like such plays by Shakespeare, such as A Comedy of Errors and Twelfth Night
Truffaldino, who serves two masters, often mistakes orders by a master for ones by the other master. Each master doesn't know that he has another master, so there's confusion. Unlike characters on stage, audiences know why there's confusion, so the advantage makes the play funny. I think such a comedy is similar to A Comedy of Errors.
One of the heroines, Beatrice, disguises as a man and comes to Venice to follow her lover. This plot reminds me of Julia in The Two Gentlemen of Verona and Jessica in The Merchant of Venice (Jessica's disguise is for eloping, though). Also, when she mistakenly thinks her lover died and grieves, she looks like Imogen in Cymbeline and Rosalind in As You Like It. In addition, when Beatrice hesitates to fight because she is a woman, the scene is similar to that of Viola and Sir Andrew in Twelfth Night.
I liked the plot, but I also liked the direction in this production. Among classical costumes, makeup, and music, I thought their costumes were interesting. They were in white, but each character had coloured decorations. Family members had the same colour for their decorations, so it was visually understandable. Truffaldino had colourful patches, including other characters' colours. As he was commedia dell'arte's Arlecchino, he was a catalyst indeed but also looked so because of the colours of his costume.
I liked both of the plot and the direction.



Popular posts from this blog

陽気な幽霊@シアタークリエ

2025年5月10日、シアタークリエにて『陽気な幽霊』を観劇(3時間、休憩込み)。 嚙み合わない会話や嫉妬によって笑える喜劇でしたが、終わり方はしっとりとしたものでした。二人の妻の霊を見送ったチャールズが、寂しそうで、でも解放されたようにも見え、印象的でした。この場面が特に心に残ったのは何故か思い返してみると、2021年にロンドンの Harold Pinter Theatreで観た上演 では、この場面がカットされていたからだと思います。その上演では、エルヴィラの霊をあの世に戻すことができず、ルースの霊まで呼び出してしまった、というところで終わっていたと思います。記憶が曖昧な部分もありますが、当時の観劇ノートを見返すと、マダム・アーカティの失敗が観客の笑いを誘って幕、と書いてあり、上演時間も40分ほど差があるので、そうだったはずです。『陽気な幽霊』を観るのはその時が初めてだったので、そのような終わり方をするものだと思い込んでいました。それなので、今回初めて観た最後の場面が、特に印象に残ったのだと思います。 笑いと感動の両方を楽しめた舞台、観ることができて良かったです。 On 10 May 2025, I saw and heard Blithe Spirit by Noël Coward at Theatre Creation in Tokyo.  The play, full of misunderstandings and jealous, was a hilarious comedy. However, the very last scene was a touching one. When the wives' spirits had gone, Charles looked sad but a little relieved. I wondered why this scene was especially touching for me, and I realised the past production that I saw at Harold Pinter Theatre in London (2021) didn't include this scene so it was fresh for me this time. In ...

The Shakespeare Memorial Room

大学院のウェルカムウィークに参加するため、バーミンガムに来ています。セッションの合間にフリータイムがあり、その時間を利用して、バーミンガム図書館という公共の図書館を訪れました。そこにはシェイクスピア・コレクションとシェイクスピア・メモリアル・ルームがあるため、行ってみたいとずっと思っていました。 コレクションには、シェイクスピアの本、上演のポスター、写真など100,000点以上のアイテムが所蔵されているそうですが、いくつかのアイテムを見るためには予約が必要とのこと。今回私は研究者というより観光客目線で訪れたので、コレクションにはアクセスせず、一般公開されているメモリアル・ルームのみ見てきました。それだけでも面白かったです。 まず、メモリアル・ルームは図書館の9階にあるのですが、そこに向かうエレベーターの中では『マクベス』の魔女の台詞が流れていました。Fair is foul and foul is fairの部分です。有名な台詞なので流したい気持ちは分かりますが、暗いエレベーターの中で聞こえるとびっくりしました(笑) そしていよいよメモリアル・ルームへ。意外と小さい部屋で、ハイライトを簡潔に紹介し、ピンポイントで見たい所蔵品があれば予約してねという入口として位置付けられる部屋だと思いました。それでも、紹介の文が書かれたパネルは読み応えがあるものでした。コレクションとメモリアル・ルームの紹介に始まり、公共図書館として一般に開かれてきたこと、フォリオの紹介、シェイクスピアの私生活とキャリア、アイコンとしてのシェイクスピアなど色々書かれていました。その他にも、美術、印刷、言葉、音楽、そして上演といった視点からのシェイクスピアについてのパネルがあり、シェイクスピアを楽しむ人がどの角度から楽しんでも良いのだなという幅広さを感じました。 ハイライトとして紹介されていたものの中に、1972年8月に日生劇場で上演された『ハムレット』のポスターがあり、日本でのシェイクスピアの人気(それをイギリスのコレクションが知っていること)を実感しました。 また、メモリアル・ルームの雰囲気も素敵で、ワシントンDCにあるフォルジャー・シェイクスピア・ライブラリーと似ていると思いました。 メモリアル・ルームを見る前後に、9階からバーミンガムの景色を一望できました✨ I visited the Libr...

自己紹介 / Introducing myself

このブログを見てくれてありがとうございます。Rena Endoです。日本に住みながら、イギリスの大学院の博士課程(ディスタンスラーニングコース)に所属しています。 It's Rena Endo, living in Japan but attending a British university by distance learning. Research / Activity イギリス演劇を研究する大学院生・大学講師として、劇場と教室を繋ぐ存在になりたいです。その目標のための、学会発表や論文投稿、劇場でのレクチャーについて、お知らせや報告をしていきます。 I'm a PhD student studying the English drama and a Japanese theatre industry. I also teach at universities. My ambition is to be active at a classroom and at a theatre; I encourage students to enjoy stage productions (in addition to studying by turning a page), and I give academic (but not-too-formal) lectures to theatre enthusiasts at a theatre. I write about such activities in this blog. Theatre イギリス演劇以外にも、色々なジャンルの舞台芸術を鑑賞することが好きです。観劇の感想を投稿していきます。日本語と英語の両方で書いていくので、英語圏の友人にも読んでもらえたら嬉しいです。日本にはこんな舞台作品があるんだよ!と伝えたいです。 I enjoy seeing various kinds of theatre productions. When I see a performance, I write about what I see and how I think about it. The posts are written both in Japanese and in English, so I...