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オーランド@PARCO劇場

2024年7月6日、PARCO劇場にて『オーランド』を観劇(2時間30分、休憩込み)。ヴァージニア・ウルフの小説を舞台化したアダプテーションでした。以下、ネタバレ注意です。
ジェンダーの観点から注目される作品ですが、それだけでなく、国や時代や文明について、そしてそれらの違いがもたらすボーダーについて、考えさせられる上演でした。
特に印象に残ったのは、オーランドがジプシーとして生活していた場面です。ジプシーたちは、文字を書くオーランドのことを、他者として見ていて、のけ者にしようとします。彼らの生活様式を考えれば、異なる存在が脅威にもなり得ることは分かるのですが、現代の日本に生きる者としてこの場面を見ると、「自分たちとは違うから排除しよう」という姿勢が、恐ろしく見えました。
上演の終盤では、現代の戦争の描写もありました。はじめは、それが唐突に見えたのですが、今になって考えると、ジプシーの場面で感じた恐ろしさと繋がるのではないかと思いました。戦争は、異なるものを排除したり、弾圧したりしようとすることによるものだからです。
このようなことを考えると、ジェンダー以外にも、色々な点で現代の私たちに問いかけてくる作品だと思いました。

(Caution: contains a spoiler.)
On 6 July 2024, I saw and heard Orlando at Parco Theater in Tokyo. It was a stage adaptation of Virginia Woolf's novel.
The novel is worth noting from the perspective of gender, but I thought the production included the matter of nationality, era, and civilisation, and the borders caused by differences of them.
I thought so especially in the gypsy's scene. When Orlando lived as a gypsy, other gypsies tried to exclude Orlando, because Orlando wrote, which was different from them. I understood that alien existence might be a threat when thinking about their lifestyle, but still, I found the scene frightening because of their attitude to leave out the person who was different from them.
At the end of the play, there was an allusion to wars, probably to modern ones. I thought it was persuasive because it was just after we saw the cruelty of excluding in the gypsy's scene. Similarly, wars are caused by hatred among different regions, religions, cultures, and so on.
Then, I thought the production was an important one for the modern audiences, even though Woolf live in the past era.



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