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無伴奏ソナタ@サンシャイン劇場

2024年8月3日、サンシャイン劇場にて『無伴奏ソナタ』を観劇(2時間30分、休憩込み)。オースン・スコット・カードの小説をもとに舞台化され、それが今回初めてミュージカル化されたものでした。以下、ネタバレ注意です。
まず、役と役者の関係が興味深いと思いました。主人公のクリスチャンは、音楽の天才として見出され、作曲家としての役割が与えられます(作中では「メイカー」と呼ばれる役割でした)。そして、メイカーの行動を監視する「ウォッチャー」という役割が登場します。ウォッチャーはクリスチャンの人生を大きく変えるので、敵役のような存在にも見えるのですが、実はウォッチャーはかつてメイカーであったこと、従ってクリスチャンの気持ちも分かっていたことが、作品の終盤で明かされます。今回ウォッチャーを演じた役者は、以前ストレートプレイとして同作品が上演された時に、クリスチャンを演じていたそうです。ウォッチャーとメイカーの心理的な繋がりを、台詞以外に醸し出されるところでも感じ取ることができたのですが、それはクリスチャンを演じたことのある役者がウォッチャーを演じたからかもしれない、と今になって思います。
次に、音楽が良かったです。今回のミュージカルは、既に小説として、それからストレートプレイとして、存在していたもののミュージカル化でした。それなので、はじめからミュージカルとして作られるよりも、作品づくりが難しいものだったと想像します。それを成し遂げた作曲家や演出家に感銘を受けました。
ストレートプレイ版は観たことがないのですが、いつか再演されたら、そちらも観劇して比較することができればと思います。

(Caution: contains a spoiler.)
On 3 August 2024, I saw and heard Unaccompanied Sonata at Sunshine Theatre in Tokyo. It was a musical based on a novel by Orson Scott Card. 
The protagonist works as a composer (it is called "Maker" in the story). There is a character called "Watcher" and he monitors what Makers do. The Watcher looks like an antagonist, but at the end of the story, it is revealed that the Watcher was a Maker once so he understands the Maker's feelings. Actually, the actor who played the Watcher this time played the protagonist, a Maker, in the past productions in 2012, 2014, and 2018. Then I thought the actor understood both of the characters just like the Watcher understood the Maker. 
Also, I liked the music in the musical. When performed before, it was not a musical but a straight play. This time, it became a musical for the first time. I imagine it would be more difficult to include some music and songs into the play which was already established than to make a musical from the ground up. I admire the composer and the director who did this well.
I'd like to see the musical again, and I'd like to experience the non-musical version too if there is a chance.



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夏の夜の夢@彩の国さいたま芸術劇場大ホール

2024年12月14日、彩の国さいたま芸術劇場大ホールにて『夏の夜の夢』を観劇(2時間20分、休憩込み)。 惚れ薬の魔力を解く場面が印象的でした。ライサンダーの心をヘレナからハーミアに戻すために、魔力を解く草の汁がライサンダーの目に絞られますが、今回の上演では、ディミートリアスの目にも絞られていたので驚きました。それでは二人がハーミアを取り合う状態に戻るのではないかと思いましたが、魔力が解かれた後も、ディミートリアスはヘレナを慕っていました。シェイクスピアの原文は、ディミートリアスとヘレナが結ばれるのは真実の愛ではなく惚れ薬のためではないかという疑問が残る終わり方ですが、その疑問に対する演出だったのではないかと思います。『夏の夜の夢』が始まる前の話として、ディミートリアスとヘレナは恋仲にあったので、その時点まで戻るという意味で、魔力が解かれたのではないかと想像します。 On 14 December 2024, I saw and heard A Midsummer Night's Dream by William Shakespeare at Saitama Arts Theater in Saitama. The most interesting scene was when Puck used the herb to amend the confusion among Athenian lovers. In Shakespeare's text, Puck crushes it into Lysander's eyes to make him unspelled. However, in this production, Puck used the herb for both Lysander and Demetrius. I thought that might lead them to love Hermia if both of them were unspelled, but Demetrius still loved Helena even after Puck's use of the herb. I didn't know why, but I assumed that Demetrius went bac...

ロミオとジュリエット@新国立劇場小劇場

2024年12月7日、新国立劇場小劇場にて『ロミオとジュリエット』を観劇(1時間50分、休憩なし)。新国立劇場演劇研修所第18期生の公演でした(修了者も2名出演していました)。以下、ネタバレ注意です。 現代社会の暗い側面を映したような演出でした。一番驚いたのは、ロザラインの名前が出てこなかったところです。それにより、冒頭のロミオの憂鬱が、恋によるものではなく、現代の若者の閉塞感のように見えました。 他の登場人物にも、やり場のない思いが表れていたと思います。例えば、暴力を止める大公自身が暴力を振るうので、どうしようもない社会という感じがしました。 このような演出は、2021年にロンドンのグローブ座で観た Romeo and Juliet と似ていると思いました。どちらの上演も、人間の愚かさや現代社会の問題を突き付けてくるようなものだったので、見ていて悲しくなりましたが、それは嫌な上演という意味ではなく、観客が考えたり行動したりするきっかけになる可能性があるという点で、良い上演だったと思います。 (Caution: contains a spoiler.) On 7 December 2024, I saw and heard Romeo and Juliet by William Shakespeare at New National Theatre Tokyo.  It seemed to me that this production reflected current social issues. To my surprise, there was no mention to Rosaline. Then, Romeo's melancholy in the beginning of the play looked like frustrations that today's young adults may have, rather than the melancholy because of love. Other characters also had frustrations, which was not surprising in this production with full of violence. Prince Escalu...

天保十二年のシェイクスピア@日生劇場

2024年12月21日、日生劇場にて『天保十二年のシェイクスピア』を観劇(3時間35分、休憩込み)。 シェイクスピアの全作品が散りばめられた作品なので、各場面にクライマックスがあるように思いました。そのような中で、作品全体のクライマックスで鏡が出てきたことには、象徴的な意味があったと思います。『天保十二年のシェイクスピア』の終盤では、悪役への復讐として、その醜さを直視させるために鏡が使われていました。シェイクスピアの戯曲には、対立、反逆、狂気、取り違え、嫉妬など様々な要素がありますが、作者・井上ひさしにとってのシェイクスピアは、とりわけ"reflection"がキーワードなのかと思いました。日本語の適訳が思い浮かばないのですが、芝居が世相を映す、観客が登場人物を見て自分を見つめ直す機会を得る、という意味での「映す/映る」ということです。そのことに気付けたので、今回の観劇は興味深いものでした。 2020年に観劇 してから4年以上経ち、シェイクスピア作品への直接的・間接的言及が分かる箇所は増えました。それでも、37作品全てに気付くには至りませんでした。まだまだ修行が必要だと思いました(笑) On 21 December 2024, I saw and heard Tempo 12-nen no Shakespeare by Hisashi Inoue at Nissay Theatre in Tokyo.  As the plot of the play was woven from all of the Shakespeare's plays, each scene had a climax, such as love, reunion, death, and so on. In the very last climax at the end of the play, a character brought a mirror (or a glass) for revenge, which was iconic. She brought it in front of the Richard-like villain, who had killed her twin sister and her husband, so that the vi...