Skip to main content

Posts

Showing posts from November, 2024

SONG WRITERS@シアタークリエ

2024年11月21日、シアタークリエにてミュージカル『SONG WRITERS』を観劇(2時間35分、休憩込み)。2015年の再演を観て以来、9年ぶりの再々演でした。以下、ネタバレ注意です。 まずなるべく客観的に感想を書くと、物語の構成が面白かったです。ミュージカルの上演を目指すソングライターたちの話ですが、劇中劇の位置付けが、これから上演するもの(現在や近い未来のこと)ではない、というところが興味深かったです。劇中劇としてつくられるミュージカルの内容は、それをつくる登場人物の一人が既に経験していたことで(ある登場人物が自分の経験をもとに劇中劇のミュージカルをつくろうとしていたということです)、劇中劇が過去の出来事として位置付けられるところが珍しいと思いました。このような構成なので、劇中劇のミュージカルと、過去の出来事が交差するのですが、それはミュージカルや演劇と相性の良い手法だと思います。というのは、ミュージカルや演劇といったメディアは、劇中劇、回想シーンともに、照明や舞台セットを変えたりして、別の枠の中で提示することが多くあるからです。 次に主観的に書くと、脚本家、作曲家、出演者が私の好きな人たちばかりだったので、とても好みの上演でした。2019年に観たミュージカル 『怪人と探偵』 と、一部のキャスト・スタッフが同じだったので、似たものを感じました。どちらの上演も心に残っています。両作品とも日本発のオリジナルミュージカルです。日本のミュージカル界には輸入作品が多い中、いちからミュージカルを創作する方々の熱意には心が動かされます。また観たいです。 (Caution: contains a spoiler.) On 21 November 2024, I saw and heard a musical Song Writers at Theatre Creation in Tokyo. I saw the same production in 2015, and I was glad to see it again. I like the plot of the musical. It is a story about songwriters, who try to write a musical. The interesting point is, one o...

十二夜@吉祥寺シアター

2024年11月9日、吉祥寺シアターにて『十二夜』を観劇(2時間30分、休憩込み)。変装した登場人物や、取り違えられる双子に興味があるので、ヴァイオラとセバスチャンの場面を中心に感想を書きます。 まず、第3幕第4場で、アントーニオから「セバスチャン」と呼び掛けられ、兄が生きているのではないかと希望を持ったヴァイオラの傍白が印象に残りました。シェイクスピアの原文では、10行にわたる傍白の途中で、サー・トービーの台詞が挿入されています。ヴァイオラはそれに気付かないほど、兄の安否に集中しているということです。しかし観客の立場からすると、兄が生きているかもしれないという劇的な場面の台詞が突然分断されるようで、サー・トービーの台詞の後でヴァイオラの傍白に集中し直すのが難しいな、と思っていました。今回の上演では、サー・トービーの台詞が途中になかったので、希望を持つヴァイオラの視点に没入することができました。 次に、セバスチャンと遂に再会したヴァイオラが、自分のアイデンティティーを明かす時の演出が良かったです。自分がヴァイオラだと言う時(観客も彼女の本名を知るのはこの時が初めてなのですが)、彼女は男装に使っていた帽子を取り、長い髪を見せました。この演出は、2021年にロンドンのグローブ座で観た Twelfth Nightの演出 と似ていると思いました。その時のヴァイオラは、ダブレット(男性用の上着)を舞台上で脱いでいました。 当時の感想 にも書きましたが、このような演出は、本当に女性の姿に戻れるのかという問題をはらんだヴァイオラのこの先を、明るいものとして提示するものだと思います。 最後に、フェステが歌う間の演出についてです。幕切れのフェステの歌の間、他の登場人物は、カップルや関わりのある人物同士、寄り添ったり、背中合わせに座ったりするという演出でした。そんな中、ヴァイオラとセバスチャンも背中合わせに座っていたのですが、その二人をオリヴィアが抱き締めていたので、驚きました。実は、今回の上演では、フェステとオーシーノーが一人二役で演じられていたので、フェステが歌っている間は、ヴァイオラ&オーシーノーおよびセバスチャン&オリヴィアをペアにしておくことが不可能だったという都合もあると思います。しかし、もしかしたら、ヴァイオラとセバスチャンはシザーリオという像を通して、オリヴィアの目には...

お気に召すまま@明治大学アカデミーホール

2024年11月9日、明治大学アカデミーホールにて『お気に召すまま』を観劇(2時間15分、休憩なし)。明治大学の学生による「明治大学シェイクスピアプロジェクト」の公演でした。 元々男性の役が女性の役に変更されているケースが複数ありました。例えば、ル・ボウは女性の呼称で呼ばれていました(マダムかマドモアゼルか忘れてしまいましたが、ムッシューではなかったと思います)。また、コリンは、上演前に公開されたSNSで「羊飼いのおばあちゃん」と紹介されていました。男性の役を女性が演じるのではなく、役の性別から変更されるというのは、「ロザリンド(女性)になりきるギャニミード(男性)を演じるロザリンド(女性)」の入れ子細工な役柄をを際立たせるためだったのかな、と想像します。 明治大学シェイクスピアプロジェクトの上演台本は、学生自身が翻訳を行っているので、既存の翻訳を使用する場合よりも、役の性別や言葉遣いなどに関して自由にできるのだと思います。そのためか、台詞を言う学生たちが、自分たちの言葉として話しているようで、生き生きとして見えました。面白かったです。 On 9 November 2024, I saw and heard As You Like It by William Shakespeare at Meiji University in Tokyo. It was a production by a project called "Meiji Shakespeare Project", for which students at the university perform a play by Shakespeare once a year. Some male roles were played by female actors. That being said, it was not the gender blind casting but the gender of the characters was changed. For example, Le Beau was called by the female title. Also, Corin was introduced as a female shepherd. I guess such ...

カナレットとヴェネツィアの輝き@SOMPO美術館

SOMPO美術館にて開催中の展覧会「カナレットとヴェネツィアの輝き」に行ってきました。18世紀ヴェネツィアのヴェドゥータの巨匠、カナレット(ジョヴァンニ・アントニオ・カナル)の作品を中心に集めたものでした。 カナレットの風景絵は、写真のようにリアルな描写が特徴で、その場所を実際に訪れたような気持ちにさせてくれます。現代の人が写真を見て旅行に行きたくなったり、旅行先で記念に絵葉書を買ったりするのと似ていると思います。実際、カナレットが生きていた当時は、グランド・ツアーでイタリアを訪れた人々が記念に彼の絵を購入していたそうです。 …と、ここまでは今回の展覧会に行く前から思っていたことでした(以前、日本やイギリスの美術館を訪れた時の投稿にも、同じようなことを書いています)。今回の展覧会で初めて知ったことは、構図や光の入り方などにおいては「演出」がなされていたということです。例えば、ある建物が実際の遠近法では考えられない大きさになっていたり、光の入り具合が調整されていたり、という点が見られる作品もあるということです。絵のタッチがリアルであるために、本物の景色をそのまま写したのだと思い込んでいましたが、そうではない作品もあると知って驚きました。現代でも、拡張現実で景色を演出する楽しみがあると思います(ゼロから想像/創造することもできますが、この場合はそこまでいかないので「演出」と言いたいと思います)。そう考えると、カナレットの手法は現代に通じるところがあり、興味深いと思いました。 カナレットの絵が好きなので、いつかヴェネツィアを訪れて、絵と同じ構図で景色の写真を撮ってみたいという夢があります。今回の展覧会を訪れて、あらためてそう思いました。 I visited Sompo Museum of Art in Tokyo and saw an exhibition titled "Canaletto and the Splendour of Venice". It focused on the works by Giovanni Antonio Canale, known as Canaletto. I like his landscape paintings because they are so realistic that I feel as if I ...