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ザ・シャーロック@イマーシブ・フォート東京

2025年3月5日、イマーシブ・フォート東京にて体験型演劇『ザ・シャーロック』を体験(120分、休憩込み)。従来の演劇とは異なる体験ができて面白かったです。

体験型演劇について
イマーシブ・フォート東京は没入型の体験ができるパークです。3月5日現在、4つの作品が上演されていました。私が体験した『ザ・シャーロック』は、舞台上の出来事を客席から観る従来の演劇とは異なり、複数の場所で同時多発的に場面が進むものでした。どの登場人物を追っても良いので、どこを見るかによって得られる情報が異なり、それによって作品に対する感想も一人一人異なるだろうという点が興味深かったです。

作品について
『ザ・シャーロック』は19世紀ロンドンのベイカーストリートが舞台で、シャーロック・ホームズやワトソン、モリアーティ教授などが登場します。ホームズファンには嬉しいものだと思います。また、イギリスが好きという人も楽しめるものだったと思います。というのは、登場人物の衣装や、部屋や街並みのセットが上手く再現されていたと思ったからです。本当に当時のロンドンに紛れ込み、ホームズたちを間近で見ているような気分になりました。
上演後、友人(一緒に行ったけれど上演中は別行動だった友人)と考察し合うのも楽しかったです。異なる場所で異なる場面が展開される今回の作品においては、自分の見たものが絶対的な正解ではなく、作品の一部に過ぎませんし、真犯人による見せかけである可能性もあります。そのような上演の仕方は、ミステリーと相性が良いと思いました。被害者側の場面を中心に目撃した友人と、ホームズを中心に追っていた私が感想を話し合った時、見てきた出来事のタイムラインが異なり、別の作品のようで驚きました。それでも、少しずつ重なる情報もあったので、相手の話を聞いているうちに「(自分が見た時は)この台詞の意味だけ理解できなかった…」と思っていたところに対してパズルのピースが埋まっていくようで気持ちが良かったです。終演時にドリンクチケットをもらい、引き換えた飲み物を片手にパーク内のレストランで話すという、素敵な時間でした。従来の演劇でも、観劇後にカフェなどに立ち寄って感想を話すことがあります。演劇はコミュニケーションのきっかけになると思います。

没入について
19世紀のロンドンに紛れ込んで、ホームズたちの周りで起きる出来事を目撃したような気分の120分でした。そうなることを期待してだと思いますが、周りの観客を見てみると、ヴィクトリア朝風の服で来ている観客も多くいました。私も、フリルのついたロングワンピースを着て行きました。友人に「貴婦人みたい!」と言ってもらえて嬉しかったのもあり、上演中、少し気取った歩き方になっている自分に気が付きました。観客は、役者ほどのパフォーマンスをするわけではありませんが、参加者としてその作品の世界にいるので、服装を考えたり、ちょっとした仕草が変わったり、というように普段とは異なるペルソナになるのかな、とも思いました。

面白い観劇体験ができ、その後も楽しい時間を過ごせたので、特別な一日となりました!

On 5 March 2025, I experienced an immersive theatre titled The Sherlock at Immersive Fort Tokyo. I enjoyed the experience, which was different from that of a conventional theatre performance.
(1) About an immersive theatre: Immersive Fort Tokyo is a facility where people can experience an immersive theatre. In the one I experienced, The Sherlock, several scenes happen simultaneously, unlike a conventional theatre performance where audiences see what happens on the single stage. In The Sherlock, you can follow any characters, so what you witness may be different from what another audience sees. Then one's impression towards the show may be different too, which is an interesting aspect of an immersive theatre.
(2) About The Sherlock: The story is about incidents in Baker Street, London, in 1894. As Sherlock Holmes, Watson, Professor Moriarty and other famous characters appear, Sherlockians or Holmesians may be enthusiastic about the show. Those who are interested in an English culture, especially the one in the Victorian era, will like the show too. That's because characters' costumes and stage settings, including scenery and props, were well designed. Because of the meticulousness, I felt as if I were a Londoner in the 19th century.
After the show, I also enjoyed discussing it with a friend of mine, who witnessed different scenes from what I saw. In The Sherlock with different scenes happening simultaneously, what I see is only a part of the whole story, or what you see may not be the truth, deceived by the culprit. Such theatrical strategies are suitable for particular genres such as mysteries. Indeed, what a friend of mine saw and how she felt were quite different from what I saw and how I felt. We enjoyed talking with drinking a cup of juice at a restaurant inside the facility. For a conventional theatre performance, I also like to talk about the production afterwards at a cafe near a theatre. I think (whether conventional or immersive) performances can be a good topic for communication. 
(3) How I felt about immersive experience: I enjoyed being a part of The Sherlock. Probably because we anticipated that, many of the audience members wore Victorian-like clothes and I wore a frilled long dress too (to borrow my friend's words, I was like an English lady). I realised that I walked like a lady during the show. Audience members don't act as much as actors do, but still, they join the story. To be immersed in the story, we like to think about what to wear, tend to behave accordingly, or even show another persona.
I enjoyed seeing the show, joining it, and discussing afterwards!








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