Skip to main content

嵐 THE TEMPEST@俳優座劇場

2025年4月19日、俳優座劇場にて『嵐 THE TEMPEST』を観劇(3時間5分、休憩込み、カーテンコール込み)。4月末で閉館する俳優座劇場の最後の公演ということで、「さようなら俳優座劇場」として上演されていました。10日間の上演期間のうち、千穐楽公演を観に行きました。
むき出しの舞台と簡素な舞台装置が印象的でした。大掛かりな舞台装置や豪華な演出に頼らず、役者の力で上演を届けるという姿勢が見られました。今回の上演では、新訳が使われていたのですが、プロスペローは「演出」「筋書き」といった表現をよく使っていました。他の訳でもそうであるのかはこれから確認したいと思いますが、このような言葉の選択は、演出家のようにも役者のようにも振る舞うプロスペローの姿と、役者の力を主な要素とする今回の上演が重なるようで、演技、演出、翻訳が調和した上演だったと思います。
「赦し」は作品のテーマの一つですが、赦すという行為を単純に描くのではなく、長い苦労と恨みの期間が終わりに向かっていくことを丁寧に表現した演出、演技だったと思います。その過程で、プロスペローは魔法を手放します。苦労や恨みだけでなく、魔法も含めて、終わりに向かっていく様子は、寂しさと美しさを持ち合わせたもので、俳優座劇場での上演が最後であることを思い出させるものでした。そのことを最も強く感じたのはプロスペローによるエピローグで、芝居の上演が魔法のようなものだとしたら、上演の終わり、劇場の終わり、そしてプロットとしての魔法の終わりが重なって見え、感動を誘うものでした。
俳優座劇場では、プロデュース公演としてイギリス演劇を観たり、プロデュース公演でなくてもシェイクスピア作品を観たりして、何度も通った思い出があります。最後の瞬間に立ち会えて良かったです。

On 19 April 2025, I saw and heard The Tempest by William Shakespeare at Haiyuza Theater in Tokyo. It was the last production at the theatre, which is going to close at the end of this April. I saw the very last performance on the closing day.
It was performed on a bare stage with simple sets. Then, I thought actors' actions were the main factor of the production. It was a good direction particularly in this play because Prospero manipulates other characters as if he were a playwright, director, or actor.  Actors in the production, and Prospero as a character, showed dramatic scenes, which overlapped each other.
One of the themes of the play is forgiveness. This production carefully showed the process in which Prospero's long, hard, revengeful (or 'angry' at least) days were coming to an end. In the process, Prospero gave up his magical power. Things, not only his hard days but also his magical power, were coming to an end, which reminded us that the last moment of the theatre's history was near. I thought so especially in the Epilogue by Prospero.
I saw many productions at Haiyuza Theater, including Shakespeare's plays and other plays by English playwrights. I'll miss the theatre, but I was glad that I could attend on the last day and could share the feelings with other audience members.

(撮影OKの時間に撮った舞台上の様子です)










Popular posts from this blog

The Shakespeare Memorial Room

大学院のウェルカムウィークに参加するため、バーミンガムに来ています。セッションの合間にフリータイムがあり、その時間を利用して、バーミンガム図書館という公共の図書館を訪れました。そこにはシェイクスピア・コレクションとシェイクスピア・メモリアル・ルームがあるため、行ってみたいとずっと思っていました。 コレクションには、シェイクスピアの本、上演のポスター、写真など100,000点以上のアイテムが所蔵されているそうですが、いくつかのアイテムを見るためには予約が必要とのこと。今回私は研究者というより観光客目線で訪れたので、コレクションにはアクセスせず、一般公開されているメモリアル・ルームのみ見てきました。それだけでも面白かったです。 まず、メモリアル・ルームは図書館の9階にあるのですが、そこに向かうエレベーターの中では『マクベス』の魔女の台詞が流れていました。Fair is foul and foul is fairの部分です。有名な台詞なので流したい気持ちは分かりますが、暗いエレベーターの中で聞こえるとびっくりしました(笑) そしていよいよメモリアル・ルームへ。意外と小さい部屋で、ハイライトを簡潔に紹介し、ピンポイントで見たい所蔵品があれば予約してねという入口として位置付けられる部屋だと思いました。それでも、紹介の文が書かれたパネルは読み応えがあるものでした。コレクションとメモリアル・ルームの紹介に始まり、公共図書館として一般に開かれてきたこと、フォリオの紹介、シェイクスピアの私生活とキャリア、アイコンとしてのシェイクスピアなど色々書かれていました。その他にも、美術、印刷、言葉、音楽、そして上演といった視点からのシェイクスピアについてのパネルがあり、シェイクスピアを楽しむ人がどの角度から楽しんでも良いのだなという幅広さを感じました。 ハイライトとして紹介されていたものの中に、1972年8月に日生劇場で上演された『ハムレット』のポスターがあり、日本でのシェイクスピアの人気(それをイギリスのコレクションが知っていること)を実感しました。 また、メモリアル・ルームの雰囲気も素敵で、ワシントンDCにあるフォルジャー・シェイクスピア・ライブラリーと似ていると思いました。 メモリアル・ルームを見る前後に、9階からバーミンガムの景色を一望できました✨ I visited the Libr...

自己紹介 / Introducing myself

このブログを見てくれてありがとうございます。Rena Endoです。日本に住みながら、イギリスの大学院の博士課程(ディスタンスラーニングコース)に所属しています。 It's Rena Endo, living in Japan but attending a British university by distance learning. Research / Activity イギリス演劇を研究する大学院生・大学講師として、劇場と教室を繋ぐ存在になりたいです。その目標のための、学会発表や論文投稿、劇場でのレクチャーについて、お知らせや報告をしていきます。 I'm a PhD student studying the English drama and a Japanese theatre industry. I also teach at universities. My ambition is to be active at a classroom and at a theatre; I encourage students to enjoy stage productions (in addition to studying by turning a page), and I give academic (but not-too-formal) lectures to theatre enthusiasts at a theatre. I write about such activities in this blog. Theatre イギリス演劇以外にも、色々なジャンルの舞台芸術を鑑賞することが好きです。観劇の感想を投稿していきます。日本語と英語の両方で書いていくので、英語圏の友人にも読んでもらえたら嬉しいです。日本にはこんな舞台作品があるんだよ!と伝えたいです。 I enjoy seeing various kinds of theatre productions. When I see a performance, I write about what I see and how I think about it. The posts are written both in Japanese and in English, so I...

陽気な幽霊@シアタークリエ

2025年5月10日、シアタークリエにて『陽気な幽霊』を観劇(3時間、休憩込み)。 嚙み合わない会話や嫉妬によって笑える喜劇でしたが、終わり方はしっとりとしたものでした。二人の妻の霊を見送ったチャールズが、寂しそうで、でも解放されたようにも見え、印象的でした。この場面が特に心に残ったのは何故か思い返してみると、2021年にロンドンの Harold Pinter Theatreで観た上演 では、この場面がカットされていたからだと思います。その上演では、エルヴィラの霊をあの世に戻すことができず、ルースの霊まで呼び出してしまった、というところで終わっていたと思います。記憶が曖昧な部分もありますが、当時の観劇ノートを見返すと、マダム・アーカティの失敗が観客の笑いを誘って幕、と書いてあり、上演時間も40分ほど差があるので、そうだったはずです。『陽気な幽霊』を観るのはその時が初めてだったので、そのような終わり方をするものだと思い込んでいました。それなので、今回初めて観た最後の場面が、特に印象に残ったのだと思います。 笑いと感動の両方を楽しめた舞台、観ることができて良かったです。 On 10 May 2025, I saw and heard Blithe Spirit by Noël Coward at Theatre Creation in Tokyo.  The play, full of misunderstandings and jealous, was a hilarious comedy. However, the very last scene was a touching one. When the wives' spirits had gone, Charles looked sad but a little relieved. I wondered why this scene was especially touching for me, and I realised the past production that I saw at Harold Pinter Theatre in London (2021) didn't include this scene so it was fresh for me this time. In ...