Skip to main content

Twelfth Night at Shakespeare's Globe

2021年10月15日、Shakespeare's GlobeにてTwelfth Nightを観劇(2時間30分、休憩なし)。シェイクスピア作品の中で一番頻繫に観る作品だけれど、まだまだ新鮮に見える上演でした。(以下、ネタバレ注意です。)

ヴァイオラの登場シーンについて
まず印象的だったのは、1幕2場、ヴァイオラの登場シーン。客席(立見席のエリア)から登場し、"What country, friends, is this?"と観客に問いかけるので、劇場全体が作品の舞台・イリリアであるように思えました。チケット予約時や入場時に"Welcome to Illyria"と表記されていた意味がその時分かりました。
この場面で驚いたのは、ヴァイオラがエリザベス一世のような風貌をしていたことです。当時の女性らしいドレスで登場する演出は見たことがありましたが、ここまで特定の人物を思わせる演出は初めて見ました。

役者と役の性別について
今回の上演では、女性の役者によって演じられる男性の役もありました。サー・トービー・ベルチ、マルヴォーリオ、フェステなどです。このような演出の好みはさておき、Twelfth Nightでそれをやってしまうとヴァイオラの男装が薄れてしまうのでは?と心配してしまいましたが、観劇後、余計な心配だったと思いました。サー・トービー・ベルチは酔っ払いのおじさんに見え、マルヴォーリオはオリヴィアに愛されていると思い込んで舞い上がる執事に見え、フェステは身のこなしの軽い少年のような道化に見え、もちろんヴァイオラも、女性らしさが時々透けて見える男装姿に見えました。月並みな表現ですが、役者の演技が素晴らしかったです。

ラストシーンのヴァイオラについて
5幕1場、ヴァイオラの双子の兄・セバスチャンとの再会により、もつれた糸がほぐれ、ヴァイオラは女性の姿に戻ることになります。ここで新鮮だったのは、彼女がダブレット(男性用の上着)を脱ぎ捨て、自分が妹のヴァイオラだと言いながらセバスチャンに抱きつくという演出です。実はこの場面、原文には「女性の服を着る」といったト書きや台詞はなく、細かく読むとヴァイオラの女性の服を預かっている船長は捕まっているという状況で、「本当に女性の姿に戻れるのか?」「本当にハッピーエンドなのか?」という議論が持ち上がる場面なのです。これまで見た上演は、本編では男性の服のままでカーテンコールで女性の格好に戻っているという演出が多かったです。今回、女性の姿には戻らないにしても、男性の姿を脱ぎ捨てるという演出に対して、そういう解釈もあるのかと新鮮でした。

Twelfth Nightを観劇するのは、アダプテーションを含めると12回目でしたが、まだまだ発見のある作品だと思いました!

On 15 October 2021, I saw and heard Twelfth Night by William Shakespeare at Shakespeare's Globe. This is one of my favourite plays, and I enjoyed three viewpoints in particular this time.
(1) In Act 1 Scene 2, Viola, who dressed like Elizabeth I, entered from among audiences and asked "What country, friends, is this?" to them. It made the whole theatre Illyria, which was the setting of the play.
(2) Some male characters such as Sir Toby Belch, Malvolio, and Feste, were played by female actors. At first I worried if this attempt might eclipse Viola's disguise as a man, but after seeing the play I changed my mind. Sir Toby Belch indeed looked like a drunken uncle, Malvolio like a male steward who loved Olivia, Feste like a mischievous clown, and Viola looked like a woman who played a male servant. 
(3) In Act 5 Scene 1, when finally Viola saw her twin brother, she threw away her doublet (male garment) and she revealed her identity. Although there isn't a stage direction to do so in the original text, I think this attempt is good in terms of suggesting that Viola returns to a woman and can marry Orsino, a man she loves.




Popular posts from this blog

夏の夜の夢@彩の国さいたま芸術劇場大ホール

2024年12月14日、彩の国さいたま芸術劇場大ホールにて『夏の夜の夢』を観劇(2時間20分、休憩込み)。 惚れ薬の魔力を解く場面が印象的でした。ライサンダーの心をヘレナからハーミアに戻すために、魔力を解く草の汁がライサンダーの目に絞られますが、今回の上演では、ディミートリアスの目にも絞られていたので驚きました。それでは二人がハーミアを取り合う状態に戻るのではないかと思いましたが、魔力が解かれた後も、ディミートリアスはヘレナを慕っていました。シェイクスピアの原文は、ディミートリアスとヘレナが結ばれるのは真実の愛ではなく惚れ薬のためではないかという疑問が残る終わり方ですが、その疑問に対する演出だったのではないかと思います。『夏の夜の夢』が始まる前の話として、ディミートリアスとヘレナは恋仲にあったので、その時点まで戻るという意味で、魔力が解かれたのではないかと想像します。 On 14 December 2024, I saw and heard A Midsummer Night's Dream by William Shakespeare at Saitama Arts Theater in Saitama. The most interesting scene was when Puck used the herb to amend the confusion among Athenian lovers. In Shakespeare's text, Puck crushes it into Lysander's eyes to make him unspelled. However, in this production, Puck used the herb for both Lysander and Demetrius. I thought that might lead them to love Hermia if both of them were unspelled, but Demetrius still loved Helena even after Puck's use of the herb. I didn't know why, but I assumed that Demetrius went bac...

ロミオとジュリエット@新国立劇場小劇場

2024年12月7日、新国立劇場小劇場にて『ロミオとジュリエット』を観劇(1時間50分、休憩なし)。新国立劇場演劇研修所第18期生の公演でした(修了者も2名出演していました)。以下、ネタバレ注意です。 現代社会の暗い側面を映したような演出でした。一番驚いたのは、ロザラインの名前が出てこなかったところです。それにより、冒頭のロミオの憂鬱が、恋によるものではなく、現代の若者の閉塞感のように見えました。 他の登場人物にも、やり場のない思いが表れていたと思います。例えば、暴力を止める大公自身が暴力を振るうので、どうしようもない社会という感じがしました。 このような演出は、2021年にロンドンのグローブ座で観た Romeo and Juliet と似ていると思いました。どちらの上演も、人間の愚かさや現代社会の問題を突き付けてくるようなものだったので、見ていて悲しくなりましたが、それは嫌な上演という意味ではなく、観客が考えたり行動したりするきっかけになる可能性があるという点で、良い上演だったと思います。 (Caution: contains a spoiler.) On 7 December 2024, I saw and heard Romeo and Juliet by William Shakespeare at New National Theatre Tokyo.  It seemed to me that this production reflected current social issues. To my surprise, there was no mention to Rosaline. Then, Romeo's melancholy in the beginning of the play looked like frustrations that today's young adults may have, rather than the melancholy because of love. Other characters also had frustrations, which was not surprising in this production with full of violence. Prince Escalu...

天保十二年のシェイクスピア@日生劇場

2024年12月21日、日生劇場にて『天保十二年のシェイクスピア』を観劇(3時間35分、休憩込み)。 シェイクスピアの全作品が散りばめられた作品なので、各場面にクライマックスがあるように思いました。そのような中で、作品全体のクライマックスで鏡が出てきたことには、象徴的な意味があったと思います。『天保十二年のシェイクスピア』の終盤では、悪役への復讐として、その醜さを直視させるために鏡が使われていました。シェイクスピアの戯曲には、対立、反逆、狂気、取り違え、嫉妬など様々な要素がありますが、作者・井上ひさしにとってのシェイクスピアは、とりわけ"reflection"がキーワードなのかと思いました。日本語の適訳が思い浮かばないのですが、芝居が世相を映す、観客が登場人物を見て自分を見つめ直す機会を得る、という意味での「映す/映る」ということです。そのことに気付けたので、今回の観劇は興味深いものでした。 2020年に観劇 してから4年以上経ち、シェイクスピア作品への直接的・間接的言及が分かる箇所は増えました。それでも、37作品全てに気付くには至りませんでした。まだまだ修行が必要だと思いました(笑) On 21 December 2024, I saw and heard Tempo 12-nen no Shakespeare by Hisashi Inoue at Nissay Theatre in Tokyo.  As the plot of the play was woven from all of the Shakespeare's plays, each scene had a climax, such as love, reunion, death, and so on. In the very last climax at the end of the play, a character brought a mirror (or a glass) for revenge, which was iconic. She brought it in front of the Richard-like villain, who had killed her twin sister and her husband, so that the vi...