Skip to main content

ハムレット@世田谷パブリックシアター

2023年3月8日、世田谷パブリックシアターにて『ハムレット』を観劇(3時間30分、休憩込み)。以下、ネタバレ注意です。
野村萬斎演出のシェイクスピアというだけあり、和と洋の混在が興味深い上演でした。衣装や音響効果は和風、キリスト教の描写(祈禱書や祈り)は洋風でした。場面で言うと、劇中劇は浄瑠璃や歌舞伎を思わせるところがあり、ハムレットとレアーティーズが剣を交える場面は西洋のそれに見えました。
劇中劇と言えば、旅役者の都での評判について変更がなされていました。シェイクスピアの原作では、少年劇団に人気を奪われていると説明がなされ、これは当時のロンドンの劇壇を描写しているのですが、今回の上演では、疫病のせいで都の劇場が閉鎖され地方巡業に出たという設定になっていて、現代の劇壇の事情が反映されていました(必ずしもロックダウン=地方巡業とはなりませんが、疫病のせいで上演中止になるということは3年前から経験してきたことなので、観客にとっては時事問題として聞こえます)。昨年ロンドンのサム・ワナメイカー・プレイハウスでHamletを観劇した際にも書きましたが、原作からの逸脱を批判するのではなく、当時の観客に馴染みのある描写が原作でなされているのなら、現代の観客に合わせて現代の上演をつくることも一つの演出として受け入れたいと思います。

(Caution: contains a spoiler.)
On 8 March 2023, I saw and heard Hamlet by William Shakespeare at Setagaya Public Theatre in Tokyo.
It was directed by Mansai Nomura, a famous Kyogen actor. Then, the production had a mixture of Japanese elements and Western elements. Costumes and sound effects looked and sounded Japanese, but Christian elements were Western. The play-within-a-play was in accordance with Japanese traditional performance, such as puppet theatre and Kabuki. On the other hand, the scene when Hamlet and Laertes fought with swords looked like Western sword-fighting. 
Speaking of the play-within-a-play, the reputation of travelling players was changed in this production. In Shakespeare's original, Rosencrantz says they are struggling because a children's company is becoming popular, which is reflecting a fact in London in Shakespeare's time. In this production, however, there was no mention on children's company, and instead, there was an explanation that the players had difficult time during a pandemic, which was reflecting our modern world. This change reminded me of when I saw Hamlet at Sam Wanamaker Playhouse in London last year. I'd like to accept the change rather than casting a question on its authenticity, because I think it is plausible to include modern (or Japanese) elements in a production when Shakespeare's original reflects something well-known by his contemporary audiences.



Popular posts from this blog

夏の夜の夢@彩の国さいたま芸術劇場大ホール

2024年12月14日、彩の国さいたま芸術劇場大ホールにて『夏の夜の夢』を観劇(2時間20分、休憩込み)。 惚れ薬の魔力を解く場面が印象的でした。ライサンダーの心をヘレナからハーミアに戻すために、魔力を解く草の汁がライサンダーの目に絞られますが、今回の上演では、ディミートリアスの目にも絞られていたので驚きました。それでは二人がハーミアを取り合う状態に戻るのではないかと思いましたが、魔力が解かれた後も、ディミートリアスはヘレナを慕っていました。シェイクスピアの原文は、ディミートリアスとヘレナが結ばれるのは真実の愛ではなく惚れ薬のためではないかという疑問が残る終わり方ですが、その疑問に対する演出だったのではないかと思います。『夏の夜の夢』が始まる前の話として、ディミートリアスとヘレナは恋仲にあったので、その時点まで戻るという意味で、魔力が解かれたのではないかと想像します。 On 14 December 2024, I saw and heard A Midsummer Night's Dream by William Shakespeare at Saitama Arts Theater in Saitama. The most interesting scene was when Puck used the herb to amend the confusion among Athenian lovers. In Shakespeare's text, Puck crushes it into Lysander's eyes to make him unspelled. However, in this production, Puck used the herb for both Lysander and Demetrius. I thought that might lead them to love Hermia if both of them were unspelled, but Demetrius still loved Helena even after Puck's use of the herb. I didn't know why, but I assumed that Demetrius went bac...

ロミオとジュリエット@新国立劇場小劇場

2024年12月7日、新国立劇場小劇場にて『ロミオとジュリエット』を観劇(1時間50分、休憩なし)。新国立劇場演劇研修所第18期生の公演でした(修了者も2名出演していました)。以下、ネタバレ注意です。 現代社会の暗い側面を映したような演出でした。一番驚いたのは、ロザラインの名前が出てこなかったところです。それにより、冒頭のロミオの憂鬱が、恋によるものではなく、現代の若者の閉塞感のように見えました。 他の登場人物にも、やり場のない思いが表れていたと思います。例えば、暴力を止める大公自身が暴力を振るうので、どうしようもない社会という感じがしました。 このような演出は、2021年にロンドンのグローブ座で観た Romeo and Juliet と似ていると思いました。どちらの上演も、人間の愚かさや現代社会の問題を突き付けてくるようなものだったので、見ていて悲しくなりましたが、それは嫌な上演という意味ではなく、観客が考えたり行動したりするきっかけになる可能性があるという点で、良い上演だったと思います。 (Caution: contains a spoiler.) On 7 December 2024, I saw and heard Romeo and Juliet by William Shakespeare at New National Theatre Tokyo.  It seemed to me that this production reflected current social issues. To my surprise, there was no mention to Rosaline. Then, Romeo's melancholy in the beginning of the play looked like frustrations that today's young adults may have, rather than the melancholy because of love. Other characters also had frustrations, which was not surprising in this production with full of violence. Prince Escalu...

天保十二年のシェイクスピア@日生劇場

2024年12月21日、日生劇場にて『天保十二年のシェイクスピア』を観劇(3時間35分、休憩込み)。 シェイクスピアの全作品が散りばめられた作品なので、各場面にクライマックスがあるように思いました。そのような中で、作品全体のクライマックスで鏡が出てきたことには、象徴的な意味があったと思います。『天保十二年のシェイクスピア』の終盤では、悪役への復讐として、その醜さを直視させるために鏡が使われていました。シェイクスピアの戯曲には、対立、反逆、狂気、取り違え、嫉妬など様々な要素がありますが、作者・井上ひさしにとってのシェイクスピアは、とりわけ"reflection"がキーワードなのかと思いました。日本語の適訳が思い浮かばないのですが、芝居が世相を映す、観客が登場人物を見て自分を見つめ直す機会を得る、という意味での「映す/映る」ということです。そのことに気付けたので、今回の観劇は興味深いものでした。 2020年に観劇 してから4年以上経ち、シェイクスピア作品への直接的・間接的言及が分かる箇所は増えました。それでも、37作品全てに気付くには至りませんでした。まだまだ修行が必要だと思いました(笑) On 21 December 2024, I saw and heard Tempo 12-nen no Shakespeare by Hisashi Inoue at Nissay Theatre in Tokyo.  As the plot of the play was woven from all of the Shakespeare's plays, each scene had a climax, such as love, reunion, death, and so on. In the very last climax at the end of the play, a character brought a mirror (or a glass) for revenge, which was iconic. She brought it in front of the Richard-like villain, who had killed her twin sister and her husband, so that the vi...