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ある馬の物語@世田谷パブリックシアター

2023年6月28日、世田谷パブリックシアターにて『ある馬の物語』を観劇(2時間20分、休憩込み)。以下、ネタバレ注意です。
トルストイの小説が原作の音楽劇でした。タイトルの通り、馬が主人公です。馬だけを演じる役者、人間だけを演じる役者、馬と人間の両方を演じる役者がいました。配役が興味深かったです。例えば、雌馬Aはある牡馬を裏切り、女性Bはある男性を裏切るという共通点がある時、それらの役は同一の役者によって演じられていました。また、人間の役のダブリングも同様に、ある登場人物が人間Cを人間Dに重ね合わせて見る時、それらの役が同一の役者によって演じられていました。このような配役は、今回の演出家の意図ではなく、台本の時点で指示されていたそうです。作家(トルストイではなく舞台版の台本を書いたロゾフスキー)は、演出家に近い役割だったのかなと思いますが、あて書きだったそうなので、頷けるような気がします。

(Caution: contains a spoiler.)
On 28 June 2023, I saw and heard a play based on Leo Tolstoy's novel, Kholstomer, at Setagaya Public Theatre in Tokyo.
It was a story of a horse, so some actors played both horses and humans. I found the casting strategy interesting. For example, when a female horse betrays a male horse and a woman betrays a man, these female roles are played by the same actress. Also, when a human character reminds of another, these roles are played by the same actor. I heard that this casting strategy was the playwright's decision, not a director's. I thought that the playwright was somewhat like a director, and that is plausible because the script was written for certain actors.



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マクベス@彩の国さいたま芸術劇場大ホール

2025年5月17日、彩の国さいたま芸術劇場大ホールにて『マクベス』を観劇(3時間5分、休憩込み)。 『マクベス』は観劇する機会が多い作品です。それなので、これまでに観た上演と似ているところに対しても、異なるところに対しても、その理由や効果を考えることができて面白いです。 今回の上演で、過去に観た上演と似ていると思ったところは、最初に登場した魔女が人間の首を持っていたところです。これは2022年にストラットフォード・アポン・エイヴォンの The Attic Theatreで観た上演 を思い出させるものでした。どちらの上演も、魔女は亡骸が好きということを表す演出だったと思います。人の生死や運命を操る魔女らしいと思いました。 過去の上演と異なると思ったところは(というより、これまでの上演では気に留めていなかったけれど今回ハッとしたところです)、ダンカンとマクベスの関係性です。今回の上演では、第一幕で戦場から戻ったマクベスを迎えるダンカンが印象的でした。身内として、マクベスの無事に心からほっとしたように彼を抱き締めていました。ダンカンがマクベスを信頼していたことは台詞に書かれていますが、演技にもにじみ出ていたので、その後でマクベスが裏切ることを思うと胸が痛くなりました。 今年は『マクベス』の上演が豊富な年です。色々観て比較できると楽しいです。 On 17 May 2025, I saw and heard Macbeth by William Shakespeare at Saitama Arts Theater in Saitama. There are a lot of chances to see Macbeth in Japan and in the UK (and in other countries too). Then, I can compare and if there are similarities and differences, I can think about reasons and effects for them. (1) Similarity: In this production, the Witches had a head of the dead at the beginning of the play. This remi...

ナツユメ@KAAT神奈川芸術劇場大スタジオ

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陽気な幽霊@シアタークリエ

2025年5月10日、シアタークリエにて『陽気な幽霊』を観劇(3時間、休憩込み)。 嚙み合わない会話や嫉妬によって笑える喜劇でしたが、終わり方はしっとりとしたものでした。二人の妻の霊を見送ったチャールズが、寂しそうで、でも解放されたようにも見え、印象的でした。この場面が特に心に残ったのは何故か思い返してみると、2021年にロンドンの Harold Pinter Theatreで観た上演 では、この場面がカットされていたからだと思います。その上演では、エルヴィラの霊をあの世に戻すことができず、ルースの霊まで呼び出してしまった、というところで終わっていたと思います。記憶が曖昧な部分もありますが、当時の観劇ノートを見返すと、マダム・アーカティの失敗が観客の笑いを誘って幕、と書いてあり、上演時間も40分ほど差があるので、そうだったはずです。『陽気な幽霊』を観るのはその時が初めてだったので、そのような終わり方をするものだと思い込んでいました。それなので、今回初めて観た最後の場面が、特に印象に残ったのだと思います。 笑いと感動の両方を楽しめた舞台、観ることができて良かったです。 On 10 May 2025, I saw and heard Blithe Spirit by Noël Coward at Theatre Creation in Tokyo.  The play, full of misunderstandings and jealous, was a hilarious comedy. However, the very last scene was a touching one. When the wives' spirits had gone, Charles looked sad but a little relieved. I wondered why this scene was especially touching for me, and I realised the past production that I saw at Harold Pinter Theatre in London (2021) didn't include this scene so it was fresh for me this time. In ...