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検察側の証人@俳優座劇場

2023年10月22日、俳優座劇場にて『検察側の証人』を観劇(2時間45分、休憩込み)。
アガサ・クリスティーの法廷ミステリーです。2年前にイギリスで観たことがある作品でした。その時の感想はこちらからどうぞ。
イギリスでの観劇時と比べて、劇場の違いによる見え方の違いが興味深いと思いました。俳優座劇場はプロセニアム形式の劇場で、今回の上演では、舞台面が法律事務所、舞台奥が法廷と、セットが分けられていました。両者の間の黒いスクリーンを降ろしたり取り払ったりすることで、場面転換が行われていました。
イギリスでの上演は、London County Hallが会場で、2年前のブログ投稿時には「劇場」と書いたのですが、実はかつて議会の庁舎として使われていたホールだったことが後に分かりました。半円形のホールです。そのような背景があり、客席も含めて会場全体が法廷のようになっていたので、当時英語で観劇していた私は、法廷の場面だけで完結する芝居なのだと勘違いしていました。
視覚的なリアリティーを追求するか、場面転換は観客の想像力に任せて法廷の雰囲気を優先させるか、その違いに気付くことができた観劇体験でした。後者は、上演言語を母国語としない観客には少し難しいですが、演出方法としてはどちらも良いなと思いました。

On 22 October 2023, I saw and Heard The Witness for the Prosecution by Agatha Christie at Haiyuza Theater in Tokyo. I saw this play in London two years ago. You can find how I felt about it at that time from this link.
Compared to the production in London, I found out that the direction may change due to the type or shape of the theatre. Haiyuza Theater has a proscenium stage. Then, in this production in Tokyo, there was a stage set of an office in the downstage and of the court in the upstage, divided by a black screen. 
When I saw the play in London, the venue was the London County Hall, a semi-amphitheatre. I thought it was a theatre at first, but later I realised that it was not but a venue for multiple purposes, once a county hall, as its name suggested. Due to this, all the scenes were made as if we (including actors and audiences) were in the court, and I didn't know that there were some scenes taken place in other than the court. 
The question is whether to seek the visual reality by offering realistic stage sets, like the production in Tokyo did, or to cherish the atmosphere of the court by relying on audiences' imagination, like the production in London did. Although the latter might be hard to be understood by foreign audiences, both of them are interesting if there's a director's intention.



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The Shakespeare Memorial Room

大学院のウェルカムウィークに参加するため、バーミンガムに来ています。セッションの合間にフリータイムがあり、その時間を利用して、バーミンガム図書館という公共の図書館を訪れました。そこにはシェイクスピア・コレクションとシェイクスピア・メモリアル・ルームがあるため、行ってみたいとずっと思っていました。 コレクションには、シェイクスピアの本、上演のポスター、写真など100,000点以上のアイテムが所蔵されているそうですが、いくつかのアイテムを見るためには予約が必要とのこと。今回私は研究者というより観光客目線で訪れたので、コレクションにはアクセスせず、一般公開されているメモリアル・ルームのみ見てきました。それだけでも面白かったです。 まず、メモリアル・ルームは図書館の9階にあるのですが、そこに向かうエレベーターの中では『マクベス』の魔女の台詞が流れていました。Fair is foul and foul is fairの部分です。有名な台詞なので流したい気持ちは分かりますが、暗いエレベーターの中で聞こえるとびっくりしました(笑) そしていよいよメモリアル・ルームへ。意外と小さい部屋で、ハイライトを簡潔に紹介し、ピンポイントで見たい所蔵品があれば予約してねという入口として位置付けられる部屋だと思いました。それでも、紹介の文が書かれたパネルは読み応えがあるものでした。コレクションとメモリアル・ルームの紹介に始まり、公共図書館として一般に開かれてきたこと、フォリオの紹介、シェイクスピアの私生活とキャリア、アイコンとしてのシェイクスピアなど色々書かれていました。その他にも、美術、印刷、言葉、音楽、そして上演といった視点からのシェイクスピアについてのパネルがあり、シェイクスピアを楽しむ人がどの角度から楽しんでも良いのだなという幅広さを感じました。 ハイライトとして紹介されていたものの中に、1972年8月に日生劇場で上演された『ハムレット』のポスターがあり、日本でのシェイクスピアの人気(それをイギリスのコレクションが知っていること)を実感しました。 また、メモリアル・ルームの雰囲気も素敵で、ワシントンDCにあるフォルジャー・シェイクスピア・ライブラリーと似ていると思いました。 メモリアル・ルームを見る前後に、9階からバーミンガムの景色を一望できました✨ I visited the Libr...

自己紹介 / Introducing myself

このブログを見てくれてありがとうございます。Rena Endoです。日本に住みながら、イギリスの大学院の博士課程(ディスタンスラーニングコース)に所属しています。 It's Rena Endo, living in Japan but attending a British university by distance learning. Research / Activity イギリス演劇を研究する大学院生・大学講師として、劇場と教室を繋ぐ存在になりたいです。その目標のための、学会発表や論文投稿、劇場でのレクチャーについて、お知らせや報告をしていきます。 I'm a PhD student studying the English drama and a Japanese theatre industry. I also teach at universities. My ambition is to be active at a classroom and at a theatre; I encourage students to enjoy stage productions (in addition to studying by turning a page), and I give academic (but not-too-formal) lectures to theatre enthusiasts at a theatre. I write about such activities in this blog. Theatre イギリス演劇以外にも、色々なジャンルの舞台芸術を鑑賞することが好きです。観劇の感想を投稿していきます。日本語と英語の両方で書いていくので、英語圏の友人にも読んでもらえたら嬉しいです。日本にはこんな舞台作品があるんだよ!と伝えたいです。 I enjoy seeing various kinds of theatre productions. When I see a performance, I write about what I see and how I think about it. The posts are written both in Japanese and in English, so I...

王女ハムレット@横須賀市立青少年会館

2025年7月12日、横須賀市立青少年会館にて『王女ハムレット』を観劇(2時間、休憩なし)。『ハムレット』の翻案でした。 タイトルの通り、今回の上演では、ハムレットは女性だったのですが、他の多くの役も男女逆転の設定でした。例えば、亡霊はハムレットの母、ガートルードはハムレットの父、クローディアスはハムレットの叔母、といったところです。他にも、オフィーリアはハムレットの恋人の青年、その姉がレアティーズ、ローゼンクランツとギルデンスターンも女性、というように、登場人物名はそのままで、役の性別が変更されていました。最初は少し混乱してしまいましたが、それはもしかしたら私が「この登場人物はこうあるはず」「女性キャラクターはこうあるべき」、などと無意識に思い込んでいるところがあったからかもしれません。先入観や偏見を持たずに、分かったふりをせずに、観劇しようと思いました。 芝居の前半はそのような印象でしたが、後半は胸があたたかくなるようなものでした。例えば、ハムレットの父であるガートルードは、ハムレットの叔母であるクローディアスの策略を途中で知りました。それなので、剣の試合の場面で毒入りの酒を飲んだのも、毒のことに勘付いていた上で、ハムレットを守るためだったようにも見えました。原作では母が息子を愛する様子が描かれますが、今回の上演では父から娘への愛情を見ることができ、役の性別が変わると感じ方も変わるのだと思いました。それでも、親子の愛には胸に迫るものがある、というところは性別が関係ないとも思いました。 時々「次に出てくるあのキャラクターは男女どちらかな」とドキドキしながら見ていたので、ミステリーのようなサスペンスのような観劇体験でした。面白かったです。