Skip to main content

Posts

Showing posts from November, 2023

RE:レコーダー@絵空箱

2023年11月25日、絵空箱にて『RE:レコーダー』を観劇(1時間20分、休憩なし)。 不条理だけど笑える要素もあり、笑えるけれど核心をついた台詞もあってハッとしました。 記憶と記録についての芝居でしたが、一人の人間のそれというより地球規模、もしかしたら宇宙規模の記憶と記録のようにも見えてスケールが大きかったです。 それでも身近な話にも聞こえました。 そんな「だけど」「それでも」と言いたくなる、一筋縄ではいかない面白さのある作品でした。 On 25 November 2023, I saw and heard Re: Recorder , produced by Oda Made, at Esorabako in Tokyo. It was said to be an absurd play, but I thought it was sometimes comical. It was comical but it also included serious lines by some characters. It was a story about memorising and recording what happened, but I thought it was about those of the universe, instead of those of an individual. Then it seemed to be a large-scale story, but it also sounded familiar.  As I say "but" a lot in this post, it was not simple but thus an interesting play.

終わりよければすべてよし&尺には尺を@新国立劇場中劇場

2023年11月11日、新国立劇場中劇場にて『終わりよければすべてよし』と『尺には尺を』を観劇。2020年に完結した歴史劇シリーズでお馴染みの、新国立劇場×鵜山仁×シェイクスピアです。キャストやスタッフも、懐かしい顔が勢揃いでした。今回は、問題劇や暗い喜劇と呼ばれることもある『終わりよければすべてよし』と『尺には尺を』をセットで上演するという試みでした。日によっては片方のみの上演だったり、上演順が変わったりすることもありますが、私はこの順で一日に二本観ました。 ベッド・トリックを共通点に持つ二作品を一緒に上演するだけでも面白いと思っていましたが、共通の役者たちが両方の作品に出演するということによって、興味深さが増したと思います。ヘレナとマリアナ、イザベラとダイアナはそれぞれ同じ役者によって演じられるペアで、一方は夫と結ばれる女性、もう一方は貞節を守ることに成功する女性、というように役柄が鮮やかに見えました。同じカンパニーによる違う作品を観ていると「こちらの登場人物とあちらの登場人物は似ている」「このような性格の役はこの役者に似合っている」などと思うことがあります。シェイクスピアが活躍していた当時、あて書きされた役もあったと思うので、シェイクスピアの国王一座にしても、現代の色々な劇団にしても、劇団の研究は面白そうです。 …と、主要な女性登場人物についてここまで書きましたが、今回の上演で一番好きだと思ったのは『終わりよければすべてよし』の伯爵夫人でした。知恵と経験を積んだ人物ならではの名台詞が多く、本で読んだ時から気になっていたのですが、舞台上の伯爵夫人は言葉のみならず、慈愛を体現した人物として印象に残りました。シェイクスピアの他の作品にも大人の女性が登場しますが、ガートルード、マクベス夫人、マーガレットなどを思い浮かべると、強さと優しさを併せ持った伯爵夫人は特異なように思えます。 特異と言えば、『終わりよければすべてよし』は伯爵夫人の台詞から始まります。上演時、耳で聞いてはっとしたのですが、女性の台詞から始まる作品は『終わりよければすべてよし』だけなのではないかと思いました。帰宅後、シェイクスピア全集で確認したらその通りでした。プロットにおけるヒロインの印象が強く、女性像の表象が問われがちな作品だと思いますが、伯爵夫人も研究してみたいと思いました(そのような研究が既に...

ねじまき鳥クロニクル@東京芸術劇場プレイハウス

2023年11月10日、東京芸術劇場プレイハウスにて『ねじまき鳥クロニクル』を観劇(2時間50分、休憩込み)。以下、ネタバレ注意です。 原作を読み、稽古場見学もさせていただいたので、予備知識なしで観るのとはまた違った観劇体験ができました。原作の印象と観劇時の印象、および稽古場見学の感想と上演時の感想を並べて書いてみたいと思います。 小説から舞台へ 村上春樹による原作の小説を読んだ時、まず思ったことは、主人公のトオルによる語りが詳細にわたっている、ということでした。一人称の地の文が意識の流れのようで、回想の場面もありました。それなので、舞台化される時にはトオルの独白が多くなるのかな、と予想していました。しかし実際には、独白の回数は予想より少なく、音楽やダンスで表現される場面もあり、スピーディーな場面展開がなされていました。そんな中、しっかりと独白を言っていたのは、トオルを訪ねてくる間宮です。聞き手としてトオルがいるので「独白」という表現は誤りかもしれませんが、途中で遮られることなく約20分間(!)過去の出来事を一人で語っていました。脚本家・演出家にとって、音楽やダンスの力を借りずに、言葉の力で注目させたい場面だったのかもしれないと思いました。 稽古場から劇場へ 今回、株式会社ホリプロから「ねじまきレポーター」に任命され、稽古を見学するという大変貴重な機会をいただきました。稽古場見学の感想は こちらのページ からご覧いただけます。 稽古場見学では二つの場面を最後まで、一つの場面を途中まで、見学しました。そのうちの一つ、トオルとクミコが電話で話す場面では、稽古から上演までの間にさらに磨きがかかったことが見て取れました。例えば稽古中、トオルが電話を取るまでの体の動きについて、役者も演出家も一緒になって何度も練習していましたが、上演時には切れ味の良い動きを見ることができました。また、台詞の言い方については、トオルの落ち着きつつも緊張感を持った声色が印象に残っていましたが、稽古の段階よりも強く話される部分があり、役づくり・場面づくりは常に変化するものなのだと実感しました。 考える機会がたくさんあり、面白い作品だと思いました。 (Caution: contains a spoiler.) On 10 November 2023, I saw and heard The Wind-...

ハムレット@明治大学アカデミーホール

2023年11月4日、明治大学アカデミーホールにて『ハムレット』を観劇(2時間35分、休憩なし)。明治大学の学生による「明治大学シェイクスピアプロジェクト」の第20回公演でした。以下、ネタバレ注意です。 始まり方が印象的な上演でした。最初に数名が楽器を演奏しながら舞台上に登場し、楽器隊のメンバーかなと思っていたら(キャストの他に楽器隊がいて生演奏を行うからです)、後の本編で旅役者を演じる学生たちでした。彼らはローゼンクランツとギルデンスターンと出会い、それぞれがこれからエルシノア城へ向かうことを観客は知ります。分かりやすさがいいなと思いました。 それからキャストたちが登場し、ハムレットは第四独白を言います。先ほどの分かりやすさに続き、作品のテーマを提示する演出だったと思います。 そして第1幕第1場が始まります。ここでは、一番最初の"Who's there?"にあたる台詞がカットされていたことに驚きました。この台詞は、グローブ座のように賑やかな劇場で、開演前に談笑したり飲食をしたりしている観客たちの注意を引き付けるのに効果的だと思います。しかし今回の上演会場はプロセニアム形式のホールで、観客は静かでしたし、上記の通り観客の注意を引くやりとりも既にあったので、緊張感の漂う"Who's there?"がなくてもスムーズに劇を始めることができたのかなと思います。 明治大学シェイクスピアプロジェクトは日本語上演ですが、学生自身が翻訳を行い、上演台本をつくっています。約2時間半というコンパクトな上演で、第1幕第1場の他にも台詞のカットがありました。カット箇所の決定は演出家(こちらも学生です)が行うのか、翻訳を行う時点である程度決まってくるのか、気になりました。 (Caution: contains a spoiler.) On 4 November 2023, I saw and heard Hamlet by William Shakespeare at Meiji University in Tokyo. It was the 20th production of a project called "Meiji Shakespeare Project," for which students at...

A rehearsal for "The Wind-Up Bird Chronicle"

I was appointed as a reporter by HoriPro Inc., and I had a chance to visit and see a rehearsal for The Wind-Up Bird Chronicle , a stage adaptation of a novel by Haruki Murakami. The report of the rehearsal was published here ! English follows Japanese. Even if you are interested in Japanese theatre and novels or got interested in them by this report, I know it's hard for those who live overseas to visit Japan right now and see this production. But still, I'm very glad if you could visit any Japanese theatre productions if you have a chance to come to Japan someday in the future. I hope this report inspires even a little!

ねじまきレポート

この度、株式会社ホリプロから「ねじまきレポーター」に任命され、舞台『ねじまき鳥クロニクル』の稽古を見学させていただきました。そのレポートが公開されました! 稽古場見学を通して観劇がますます楽しみになり、その気持ちを素直に書いたので、読んでいただけたら嬉しいです。 「ホリプロステージ」 からご覧いただけます。