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Showing posts from May, 2024

ハムレット@彩の国さいたま芸術劇場大ホール

2024年5月25日、彩の国さいたま芸術劇場大ホールにて『ハムレット』を観劇(3時間35分、休憩込み)。 一週間前にPARCO劇場で 『ハムレットQ1』 を観ました。同時期に同作品が異なる劇場・座組で上演されるということは、上演作品の選び方にトレンドがあるのかもしれないと思っていて、今回の被りに限らず、かなり前から気になっていました。これに関してはまだ答えが見つかっていません。これからも大事にしたい問いです。 今回の『ハムレット』は、劇場の奥行きを上手に使った演出だと思いました。例えば亡霊は、客席からは見えないくらい奥から登場したので、突然現れたように見えました。また、第1幕第2場は、奥行きのある舞台に貴族たちが並んでいたので、広く豪華な宮廷に見えました。 近い時期に二つの『ハムレット』を観たので(一つは『ハムレットQ1』というタイトルですが)、無意識のうちに比較して観てしまうところがあると思います。しかし、どちらを先に観るかによって、比較の仕方も変わってくると思います。それなので、先に観た方を起点として比べるのではなく、両者を並べた時に気付いた類似点について書きます。どちらの『ハムレット』においても、劇中劇の王と王妃は金と銀の衣装を着ていて、似ていると思いました。例えばハムレットと髑髏や、オフィーリアと花のように、絵画などにより典型的な衣装や小道具のイメージがあれば分かりますが、劇中劇の王と王妃の衣装については、私の知る限り典型的なものはありません。そのような中で似た衣装だったのは何故なのか、気になりました。偶然であれば、関係者が気付いた時に「重なっちゃった!」となるでしょうし、意図的に似せたのであれば、観客の反応をうかがっているようにも思います。どちらにしても、舞台裏を想像すると面白いです。 On 25 May 2024, I saw and heard Hamlet  by William Shakespeare at Saitama Arts Theater in Saitama.  It's been only a week since I saw Hamlet Q1 at Parco Theater. These were both Hamlet but performed by different companies, so I ...

ハムレットQ1@PARCO劇場

2024年5月18日、PARCO劇場にて『ハムレットQ1』を観劇(2時間55分、休憩込み)。Q1版の『ハムレット』ということで、3時間以内に収まるコンパクトな上演でした。以下、ネタバレ注意です。 吉田羊さん演じるハムレットが良かったです。以前、男装する女性の役を演じたのを見たことがあり、男役も似合いそうだと思っていたので、今回見ることができて嬉しかったです。 ハムレットは狂気を装う時、わざと高い声で話していました。喉を痛めないかと心配になるほど(余計な心配ですね…)、その声で話す場面が多いことに驚きました。ハムレットにとって、戯曲『ハムレット』の世界は、狂気を装ったり演技をしたりと、素の自分でいられる時間が少ない息苦しいものなのだと気付かされました。 独白の時と、ホレイショーと話す時は普通の話し方でした。それから、墓掘りに話しかける時も、普通の話し方でした。墓掘りに対してハムレットが素の自分を見せられるのは、親密な相手だからではなく、元々違う立場の人間だからこそ、脅威ではないと判断し、心を開いているのかもしれないと思いました。原文では"thou"を用いて話していることと関係があるのかもしれない、とも思いました。 原文にあたった上で今回の上演をとらえると、登場人物の心情などが浮き彫りになるように思い、興味深い観劇体験ができました。 (Caution: contains a spoiler.) On 18 May 2024, I saw and heard Hamlet Q1  at Parco Theater in Tokyo. As the title shows, it is a production based on Q1 of William Shakespeare's  Hamlet . I liked Hamlet, played by Yoh Yoshida, a female actor. I had seen her play a female role who disguised as a man, which was impressive, so I imagined she would be good at playing a male role too, and it was so indeed. When pre...

二人の主人を一度に持つと@本多劇場

2024年5月11日、本多劇場にて『二人の主人を一度に持つと』を観劇(2時間25分、休憩込み)。ゴルドーニの喜劇です。 登場人物間の勘違いあり、男装ありで、個人的に好みのプロットでした。というのは、シェイクスピアの『間違いの喜劇』や『十二夜』が好きで、それらと似た点が見られたからです。 二人の主人に仕える召使い・トゥルッファルディーノは、どちらの主人の命令かをよく取り違え、混乱します。主人たちは、彼がもう一人にも仕えていることを知らないので、相手側にもう一人召使いがいると思っていて、勘違いが起こります。観客は事情を知っているので、情報量において優位に立つことができ、面白かったです。このような、召使いのドタバタが引き起こす面白さは、『間違いの喜劇』と似ていると思いました。 ヒロインの一人であるベアトリーチェは、恋人の後を追うため、男装してヴェネツィアへやって来ます。ベアトリーチェを見ていると、『ヴェローナの二紳士』のジュリアや、『ヴェニスの商人』のジェシカ(こちらは駆け落ちですが)を思い出しました。また、恋人が命を落としたと勘違いをし、男装を忘れるほど嘆き悲しむ姿は、『シンベリン』のイモージェンや『お気に召すまま』のロザリンドのようでした。さらに、決闘になりかけるも実は女性なので戦えないという場面は、『十二夜』のヴァイオラを想起させるものでした。 ここまでプロットについて書きましたが、それではどの劇団やプロダクションが上演しても同じ感想しか持たないのかと自分で突っ込みたくなるので、この上演ならではのポイントも書きます。古典的な衣装やヘアメイクや音楽が印象的だったのですが、その中でも衣装の色が良いと思いました。白を基調とした衣装の中で、家族同士には同じ色の装飾が使われていました。登場人物の関係が分かりやすく、並んだ時にきれいに見えるのも良かったです。また、トゥルッファルディーノの衣装には、他の登場人物の装飾の色である赤、青、黄、緑のカラフルな模様がありました。コンメディア・デッラルテのアルレッキーノらしく、登場人物間を行き来する身軽さが視覚的に表現されていたと思います。 台本の段階でも、演出の段階でも、好きだと思う上演でした。 (Caution: contains a spoiler.) On 11 May 2024, I saw and heard Il servi...

CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~@シアタークリエ

2024年5月4日、シアタークリエにてミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』を観劇(3時間10分、休憩込み)。 魂と引き換えに音楽の才能を手に入れたヴァイオリニストの物語です。悪魔との契約は、クリストファー・マーロウの『フォースタス博士』やゲーテの『ファウスト』を想起させるところがありました。いつの時代にも、作り手や観客の興味を引く要素なのかなと思いました。 また、19世紀のダークな雰囲気は、韓国のミュージカルと相性が良さそうだと思いました。本作は日本のプロダクションですが、韓国で上演したら話題になりそう、などと想像してみました。 On 4 May 2024, I saw and heard a musical Cross Road at Theatre Creation in Tokyo. It was a story about a violinist who got talent in exchange for his soul. The plot of dealing with the devil reminded me of Doctor Faustus by Christopher Marlowe and Faust by Goethe. I thought it was a timeless theme. Also, it had a dark atmosphere of 19th century, which I thought was similar to Korean musicals. It was a Japanese production, but I imagined it would be popular in Korea if performed there.

くまのプーさん@日本橋三井ホール

2024年5月4日、日本橋三井ホールにてミュージカル『くまのプーさん』を観劇(65分、休憩なし)。人形を使った舞台上演に興味があり、また、くまのプーさんが好きなので、楽しく観ることができました。 人形と人形使いの関係が良かったです。プーさんたちが主役なので、人形使いの方が目立ってはいけませんが、人形使いはある程度の表現を見せていました。例えば、人形の台詞や動きに合わせて、表情を変えたりしていました。このバランスは、人形使いが存在感を全く感じさせなかった My Neighbour Tororo (2022年)とも、人間の役者と人形が共演していた 『道化恐怖症』 (2024年)とも異なるもので、人形劇(あるいは、人形が登場する上演)の幅広さを感じました。 くまのプーさんは幼少期から好きです。イギリス留学中には、ゆかりの地である ハートフィールド にも行きました。今回の上演では、ハートフィールドで見た橋などが再現されていて、嬉しかったです。 On 4 May 2024, I saw and heard a musical Winnie the Pooh at Nihonbashi Mitsui Hall in Tokyo. I'm interested in a production with puppets, and I like Winnie the Pooh, so I enjoyed the show. The puppeteers' way of existence was interesting. They didn't stand out as much as puppets, but still, they had facial expressions behind the puppets. It was different from My Neighbour Totoro (2022), where the puppeteers were in black and they were supposed to be invisible, or a puppet show in Shimokitazawa (2024), where human actors and puppets were interactive to eac...