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桜の園@PARCO劇場

2023年8月7日、PARCO劇場にて『桜の園』を観劇(3時間、休憩込み)。以下、ネタバレ注意です。
イギリスの演出家、ショーン・ホームズによる演出でした。彼の演出作品は、イギリスで『十二夜』(2021年、グローブ座)、『ハムレット』(2022年、サム・ワナメイカー・プレイハウス)、『テンペスト』(2022年、グローブ座)を観ていたので、また彼の演出作品を観られるのを楽しみにしていました。
今回の『桜の園』の演出で興味深いと思ったのは、第2幕の野外の場面が、プールサイドのようになっていたことです。ビニールプールに水が張られ(シャルロッタはプールの中でキュウリをかじっていました!)、その脇にはパラソルやビーチチェアが置かれていました。この演出は、ホームズによる他の作品の上演を想起させるものでした。『ハムレット』でも舞台上にプールがあり、水が死の象徴として使われていましたし、『テンペスト』ではプールは出てこなかったものの、登場人物がアロハシャツを着ていたりして常夏の海辺を思わせる演出でした。ホームズは水辺が好きなのかな、と思いつつ、水のイメージが強い『十二夜』でそのような演出がなかったのは何故なのか、気になりました。
同じ演出家による複数の作品を比較してみると面白いので、また日本で、あるいはイギリスで、ショーン・ホームズの演出作品を観てみたいです。

(Caution: contains a spoiler.)
On 7 August 2023, I saw and heard The Cherry Orchard by Anton Chekhov at Parco Theater in Tokyo.
It was directed by Sean Holmes, a British director. I saw his productions when I was in England: Twelfth Night (2021 at Shakespeare's Globe), Hamlet (2022 at Sam Wanamaker Playhouse), and The Tempest (2022 at Shakespeare's Globe). I was glad to see his production again, in Japan this time.
In his production of The Cherry Orchard, a pool, a beach umbrella and beach chairs were brought on stage in Act 2. This reminded me of his past productions. For example, Hamlet also had a pool on stage, symbolising death. In The Tempest, many of  the scenes were turned into somewhere in a tropical beachside. Then, I wonder if he likes waterside.
It is interesting to compare several productions by one director, so I want to see his productions again, perhaps in Japan, or hopefully in England.



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インサイド・ウィリアム@三越劇場

2025年3月22日、三越劇場にてミュージカル『インサイド・ウィリアム』を観劇(1時間45分、休憩なし)。 シェイクスピア作品からの引用が多く、シェイクスピア自身も登場するフィクションでした。『ロミオとジュリエット』の原稿と『ハムレット』の原稿が混ざってしまい、ロミオ、ジュリエット、ハムレットが作品を飛び出してシェイクスピアの前に現れ、シェイクスピアどうする!?というのが『インサイド・ウィリアム』の大まかなあらすじです。観劇前にあらすじを知った時、 『Something Rotten!』 や 『The Upstart Crow』 のような笑えるバックステージものを想像していました。それは確かにそうだったのですが、笑えるだけのミュージカルではありませんでした。登場人物がアイデンティティーについて考え始めるという点で、『作者を探す六人の登場人物』のようなメタ構造の作品だと思いました。『インサイド・ウィリアム』では、作者が登場人物にどう生きてほしいと思うか、および、登場人物が自分の人生をどう生きたいと願うかが対立します。その対立を経て、自分の物語の主人公になろうというメッセージが客席に伝わってくる作品でした。「テアトラム・ムンディ」(theatrum mundi)の考え方を舞台上で見せてもらえたように思います。 On 22 March 2025, I saw and heard a musical Inside William at Mitsukoshi Theater in Tokyo.  The musical includes citations from Shakespeare's plays. Shakespeare as a playwright, and Romeo, Juliet, and Hamlet as characters appear in the musical. The plot is about what happens to Shakespeare when his drafts of Romeo and Juliet and Hamlet  are mingled by accident. Knowing the plot before the performance, I assumed that the mix...

ザ・シャーロック@イマーシブ・フォート東京

2025年3月5日、イマーシブ・フォート東京にて体験型演劇『ザ・シャーロック』を体験(120分、休憩込み)。従来の演劇とは異なる体験ができて面白かったです。 体験型演劇について イマーシブ・フォート東京は没入型の体験ができるパークです。3月5日現在、4つの作品が上演されていました。私が体験した『ザ・シャーロック』は、舞台上の出来事を客席から観る従来の演劇とは異なり、複数の場所で同時多発的に場面が進むものでした。どの登場人物を追っても良いので、どこを見るかによって得られる情報が異なり、それによって作品に対する感想も一人一人異なるだろうという点が興味深かったです。 作品について 『ザ・シャーロック』は19世紀ロンドンのベイカーストリートが舞台で、シャーロック・ホームズやワトソン、モリアーティ教授などが登場します。ホームズファンには嬉しいものだと思います。また、イギリスが好きという人も楽しめるものだったと思います。というのは、登場人物の衣装や、部屋や街並みのセットが上手く再現されていたと思ったからです。本当に当時のロンドンに紛れ込み、ホームズたちを間近で見ているような気分になりました。 上演後、友人(一緒に行ったけれど上演中は別行動だった友人)と考察し合うのも楽しかったです。異なる場所で異なる場面が展開される今回の作品においては、自分の見たものが絶対的な正解ではなく、作品の一部に過ぎませんし、真犯人による見せかけである可能性もあります。そのような上演の仕方は、ミステリーと相性が良いと思いました。被害者側の場面を中心に目撃した友人と、ホームズを中心に追っていた私が感想を話し合った時、見てきた出来事のタイムラインが異なり、別の作品のようで驚きました。それでも、少しずつ重なる情報もあったので、相手の話を聞いているうちに「(自分が見た時は)この台詞の意味だけ理解できなかった…」と思っていたところに対してパズルのピースが埋まっていくようで気持ちが良かったです。終演時にドリンクチケットをもらい、引き換えた飲み物を片手にパーク内のレストランで話すという、素敵な時間でした。従来の演劇でも、観劇後にカフェなどに立ち寄って感想を話すことがあります。演劇はコミュニケーションのきっかけになると思います。 没入について 19世紀のロンドンに紛れ込んで、ホームズたちの周りで起きる出来事を目撃したよう...

自己紹介 / Introducing myself

このブログを見てくれてありがとうございます。Rena Endoです。日本に住みながら、イギリスの大学院の博士課程(ディスタンスラーニングコース)に所属しています。 It's Rena Endo, living in Japan but attending a British university by distance learning. Research / Activity イギリス演劇を研究する大学院生・大学講師として、劇場と教室を繋ぐ存在になりたいです。その目標のための、学会発表や論文投稿、劇場でのレクチャーについて、お知らせや報告をしていきます。 I'm a PhD student studying the English drama and a Japanese theatre industry, and my ambition is to be active at a classroom and at a theatre; I encourage students to enjoy stage productions (in addition to studying by turning a page), and I give academic (but not-too-formal) lectures to theatre enthusiasts at a theatre. I write about such activities in this blog. Theatre イギリス演劇以外にも、色々なジャンルの舞台芸術を鑑賞することが好きです。観劇の感想を投稿していきます。日本語と英語の両方で書いていくので、英語圏の友人にも読んでもらえたら嬉しいです。日本にはこんな舞台作品があるんだよ!と伝えたいです。 I enjoy seeing various kinds of theatre productions. When I see a performance, I write about what I see and how I think about it. The posts are written both in Japanese and in English, so I'll be happy if English-...